市民建設常任委員会行政視察研修 報告Ⅰ

令和5年(2023)7月12日(水)~14日(金)の3日間の日程で実施された、三豊市議会市民建設常任委員会の行政視察研修の報告をします。報告は、1件目 滋賀県湖南市、2件目 奈良県宇陀市、3件目 福井市高浜町 の順に行います。

 

1件目の湖南市は、平成16年に石部町と甲西町の2町合併により誕生し、現在人口は54,000人余、面積は70.40㎢となっている。滋賀県南部に位置し、大阪と名古屋からそれぞれ100㎞圏内にあり、近畿圏と中部圏をつなぐ広域交流拠点にある。名神高速へのアクセスが良く、県下最大の工業団地が立地し、地域経済の発展に大きな役割を果たしている。

『湖南市脱炭素先行地域事業について』湖南市環境経済部環境政策課 地域エネルギー室から説明をいただいた。

湖南市総生産(総所得・総支出)は2,717億円で、地域の所得循環構造において、エネルギー代金の流出が約243億円で、GDPの約8.9%を占めている。県下最大の工業団地を有することもあり、電力料金として関電への流出が大きいことにある。

もとより環境意識に対する市民意識が高い地域であることから、全国にも珍しい〈地域に存在する自然エネルギーは地域固有の資源である〉ことを条例制定の目的とする「湖南市地域自然エネルギー基本条例」が平成24年(2012)に制定されていた。そこから『地産地消型再生可能エネルギー面的利用等推進事業(経産省)湖南市地域におけるスマートエネルギーシステム導入の検討』が行われた。

その結果、地域新電力 こなんウルトラパワー(株)が平成28年(2016)に設立された。地域新電力のメリットは ①地域で作られた地元産電力を地域で利用(地産地消) ②地域内で資金循環 ③ICTを活用し、各施設の電力見える化や遠隔制御による省エネ・節電サービスを提供 ④災害時の避難所の電源確保、レジリエンス性向上 ⑤安価な電力を提供 がある。

事業スキームは、地域の再生可能エネルギー(太陽光、風力、バイオマス、地熱、水力)を地域新電力が需給管理・運営・エネルギーマネジメントして、地域内の地元産電力を利用者へ供給することで、「エネルギーの地産地消によるエネルギーの費用流出の最小化」で地域の活性化を実現しようとするものだ。

第二次湖南市地域自然エネルギー地域活性化戦略プランにおける「地域新電力が核となって事業を推進していく取り組み」として、7つのプロジェクトがある。  1.小規模分散型市民共同発電(FITに頼らない事業展開・小規模分散型でのソーラーシェアリング・自家消費型屋根借り太陽光発電への参画) 2.家庭用太陽光発電買取(家庭での自然エネルギー活用に寄与する取り組み推進) 3.自家消費型太陽光発電(屋根借り太陽光発電事業によるエネルギーの地産地消推進) 4.イモエネルギー活用(農副連携の取り組み推進による芋製品の開発等六次化産業化への検討・ソーラーシェアリングの活用) 5.木質バイオマス活用(林福連携の取り組み推進による木質バイオマス燃料の供給実施) 6.公共施設の脱炭素化(エネルギーを主眼に置いた効率的な公共施設の維持管理について検討) 7.地域マイクログリッド構築(災害時でもエネルギー供給が途切れない防衛エリヤ検討)  いずれもSDGsの視点による展開となっている。

湖南市の目指す将来ビジョンは、━新電力を核として 地域にある自然エネルギーを活用することで 地域循環共生圏の実現とSDGsへの貢献を目指します 〈湖南市版シュタットベルケ構想〉━  として、その上で戦略プランの定量的な目標を、経済、環境、社会の角度からそれぞれ定めている。

湖南市の2030年のあるべき姿は、こなんウルトラパワーを核とした地域循環共生圏を目指したSDGs未来都市構想の実現に向けて、①自治体新電力を核とした官民連携の自然エネルギー導入プロイジェクトの実施 ②地域経済循環の創出 ③多様な主体との連携により地域の活力を創生し、未来を創造る ‟さりげない支えあい” のまちづくりの実現をめざす。

一連の取り組みと未来社会を創造する取り組みの提案が、環境省の『脱炭素先行地域』に選定されている。既に認定・発動している「SDGs未来都市認定」と「ゼロカーボンシティ宣言」を活かしながら、あるべき姿の ‟さりげない支えあい” のまちづくりに向け『湖南市脱炭素先行地域事業』に取り組んでいる。

 

湖南市には湖南市の、三豊市には三豊市のここだからこそこうするといったまちづくりの必然性があることを再認識することとなりました。自然・住環境や経済・産業の構造、歴史・文化・風土など、それぞれの地域に相応しい脱炭素社会構築があることを、自覚することから始めなければならないのだろうと、考えさせられた視察研修でした。

三豊市議会会派清風会 視察研修報告・3

視察研修の最終日となる3日目は、佐賀県佐賀市の【佐賀市清掃工場】における「バイオマス産業都市・佐賀市が目指す 持続可能な脱炭素・資源循環のまちづくり」について、市環境部循環型社会推進課3R推進係 羽立参事と小早川主任から説明をいただきました。

 

佐賀市清掃工場は、平成の大合併(1市6町1村)をきっかけに、ごみ処理施設の統合へと動きが進み、周辺地域の合意を得て平成26年に4か所あった施設を佐賀市清掃工場に集約し一括処理することとなった。

地域の理解を得るために、地域にとって有益な施設とするための施設統合の効果であるコスト縮減、バイオ資源の増加を周辺地域に還元することを目指して、地域産業の創出を実践することとし、『バイオマス産業都市構想』へと展開していった。平成26年 ‟廃棄物がエネルギーや資源として循環するまち” として『バイオマス産業都市』の認定を受けた。

取り組み内容は、1.清掃工場二酸化炭素分離改修事業 2.木質バイオマス利活用事業 3.下水浄化センターエネルギー創出事業 4.微細藻類培養によるマテリアル利用及び燃料製造事業 5.家畜排せつ物と事業系食品残差との混合堆肥化事業 6.事業系食品残差と有機性汚泥の混合利用事業 となっている。

「バイオマス産業都市さが」の基本方針は ①既存の施設を活用する ②市が仲介役を果たし企業の連携を実現する ことにある。その方向性は「これまで処理に費用をかけていたものを相互に有効利用する仕組みを構築し、処理費軽減による市内企業の経営の改善と、バイオマスの有効活用による(新)産業を育成することだ。この取り組みとして、佐賀市は仲介役に徹することとした。一つは、行政が関係者の想いや技術をつなぎ、それぞれにとってメリットのある関係を構築すること。二つは、域内の資源融通により、廃棄物量や処理費用、域外からの資源購入を抑制し、新たな価値を生み出すことで域内経済を活性化すること。

画期的ともいえる、ごみ処理施設におけるCCU事業の取り組みについて。(※CCU事業:処理施設から排出されたCO2を他の気体から分離して集め、新たな製品の製造に利用するプロセス)  平成28年、ごみ焼却施設から発生した二酸化炭素を分離回収する設備を、環境省から15億円の補助金を得て日本初として稼働し、そのCO2を植物の成長促進に実用化している。例えば、(株)アルビータによる藻類培養、クリーンラボ(株)によるバジル栽培、ゆめファーム全農SAGAによるキュウリ栽培等の実績があり、清掃工場周辺は増設・新設も含め、次々と産業が集積している。

二酸化炭素分離回収事業による経済波及効果は、54億1,300万円と算定されている。今後の事業展開は、佐賀市の取り組みを全国、そして世界に広げたい!! CO2回収設備の普及と回収したCO2の利活用で、サーキュラ(バイオ)エコノミーの浸透を図っていくことを目指している。

 

ごみ処理が目的であったとしても、そこに向かうプロセスの中で環境への負荷を軽減し、利益に転化することにとどまらず、雇用も生み出す高度な政策立案と展開は、目を見張るものがあります。三豊市におけるバイオマス資源化センターをより効果的に活用するためのCCU事業を立案していく必要性に気づかされた視察研修でした。

以上で、会派清風会の視察研修報告を終わります。

三豊市議会会派清風会 視察研修報告・2

視察研修の2日目は、鹿児島県南九州市役所を訪問し、観光行政について研修を行いました。

 

南九州市は、平成19年12月に知覧町を含む3町が合併して、人口約4万人、面積357.91㎢となり誕生した。現在人口は全国の地方都市同様、合併以来減少が続き3万人余となっている。薩摩半島の先端中央部に位置し、歴史と自然豊かな環境にあり、旧知覧町の歴史遺産や市内全域にある自然環境を生かし、観光によるまちづくりに取り組んでいる。

商工観光課の森田課長から「南九州市の観光概要」、文化財課からは「歴史遺産を活用した観光振興」、都市政策課からは「歴史と景観をいかしたまちづくり」の説明をいただいた。

【南九州市の観光概要】  昭和40年代前半に知覧武家屋敷庭園群が文献で紹介されたことに始まる。それを中心とする知覧の市街地は、昭和55年から道路や公園の整備が着手され、歴史と景観を活かした潤いのある街並み整備として、武家屋敷や平和をモチーフにした和風で落ち着いた佇まいの町づくりが進められた。町づくりが進む中、昭和62年に知覧特攻平和会館が新築され、より多くの資料展示や語り部による講和等が充実してきた。しかし、鹿児島空港からの直行バスの廃止や、新型コロナウイルスの影響もあり、近年は観光客の減少傾向が続いている。南九州市には宿泊施設が少なく日帰りが主流のため、観光消費額と滞在時間の拡大も課題である。

【知覧武家屋敷庭園群】  武家屋敷のある麓地区18.6haは、昭和56年に「重要伝統的建造物群保存地区」に選定され、7つの庭園は国の「名勝」に指定されている。その所有者等で「知覧武家屋敷庭園有限責任事業組合」を組織し、入園料の徴収やPR事業、生け垣の剪定、病害虫対策を行っている。新たな取り組みとして ●WⅰーFⅰ整備・多言語音声ガイド導入 ●周辺駐車場の無料化 ●ちらん灯採路~南九州市あかりの道標~ を展開している。

【知覧特攻平和会館】  第二次世界大戦末期に行われた特攻作戦にまつわる資料を展示し、平和の大切さや命の尊さを発信している。近年は、平和学習の場として、全国各地の学校が訪れている。

【新たな観光地づくり】  番所鼻自然公園は、伊能忠敬が「天下の絶景」と称賛したとされ、鹿児島県の事業を活用し、駐車場や園路整備して新たな観光スポットとしている。市内には、まだ埋もれた観光資源があるが、限られた予算の中で持続可能な観光地をどのように整備・維持していくかが課題だ。

【稼ぐ観光に向けた取り組み】  南九州市は日帰り観光地であるため、宿泊以外の分野で観光消費額を向上させる取り組みを進めている。 ●サイクルツーリズムの推進 ●自然を活かしたアドベンチャーパークの整備 ●体験予約サイトの運用 ●新ご当地グルメ「みなコレ名物丼」の開発 などがある。

【歴史と景観をいかしたまちづくり】  町並みの整備にあたり、歴史遺産である武家屋敷群を背景とした知覧町の街路事業では、その歴史と建造物等に十分配慮し、修景や景観の保全に努めた。昭和48年度から平成16年度の約30年をかけ、10工区の町並み整備を行った。総事業費は、75億円近くを投入した。現在、南九州市知覧町の歴史と景観を活かしたまちづくりが、観光の基盤とゆるぎない価値につながっている。

 

南九州市は、宿泊施設が少ないため、日帰り観光地となっていることの現実を直視し、宿泊の6,000円がないのであれば、食で3,000円+土産物で3,000円を稼げばいいと振り切っています。そこには、地元産品をフルに活用した食事メニューや土産物の開発に活路を見出そうとする明確な方針が見えます。

三豊市も同様の環境であることをしっかりと見つめ直し、宿泊施設誘致活動は引き続き進めていくことはもとより、地元産品を活用した商品開発による産業振興が、三豊市の観光振興につながっていくことを再確認できた研修でした。

三豊市議会会派清風会 視察研修報告・1

令和5年(2023)1月30日(月)~2月1日(水)の3日間、会派清風会の視察研修に参加しました。訪問先は鹿児島県鹿児島市と南九州市、佐賀県佐賀市の3か所でした。

 

1日目の視察研修は、『鹿児島市すこやか子育て支援館(愛称:りぼんかん)』において、鹿児島市の子育て支援施設の運営実態を、市こども未来局子ども政策課交流係の高橋主幹から説明をいただいた。

鹿児島市の子育て支援施設は、『すこやか子育て交流館(りぼんかん)』を中央館と位置づけ、市内をカバーするように東西南北に4つの『親子つどいの広場』が設置されている。さらに、それらを補完するように3つの『児童センター』と、8か所の『地域子育て支援センター』が設置されており、現在市内には16か所の拠点施設がある。

『りぼんかん』は、子育て中の親の不安感や負担感を軽減するとともに、子育て家庭や団体等の活動をさまざまな角度からサポートする総合的な子育て支援拠点として設置されている。施設の建物は、旧保養施設を平成20年から約4億円をかけ計画・改修し、平成22年度にオープンしている。

保養施設にあった温浴施設を「じゃぶじゃぶひろば」として水遊びができるプールにするとともに、近くには砂遊びのできる「さらさらひろば」を配し、思いっきり遊んだ後でも男女別の更衣室で着替えができ、子も親も誰もがストレスなく利用できるように、旧施設の特性をうまく利用して設計・配置されている。また、旧施設の1F~4Fの構図をフルに生かし活動が館内で満たされるようになっているため、天候に左右されることがなく思いっきり体を動かして遊ぶ場所となった。管理運営費は令和4年度で1億1,100万円足らずとなっており、講座等の運営費である事業費は170万円足らずだ。

利用者は、①小学校3年生までの者及びその家族 ②妊娠中の者及びその者に同伴する者 ③子育て支援に係る活動を行う者 ④子育てに係る相談等を希望する者 となっている。

鹿児島市では、中央館である『りぼんかん』を核として他の子育て支援施設がそれぞれの役割を果たしている。4つの『親子つどいの広場』の利用者は、小学校就学前の子どもとその家族としている。3つの『児童センター』の利用者は、18歳までの児童とその家族ほか、子ども会や母親クラブなど児童健全育成を目的として組織された団体としている。8か所の『地域子育て支援センター』は、4つの『親子つどいの広場』を補完するように保育所等に委託し、きめ細やかな支援体制を確保している。

終わりに、高橋主幹から今後の課題の話があった。現在、地域の身近なところにおいて子育て家庭の支援を実施しているが、今後は、多様なニーズに多面的に対応できるよう、それぞれの施設が関係機関と連携を深め全体での取り組みが必要であるため、「りぼんかん」は統合的な拠点施設として、地域のネットワークをさらに推進していく役割があるとお話しされた。

施設整備や体制強化だけではなく、施設間の連携というソフトの重要さを認識した視察研修でした。

公共施設再配置特別委員会 視察研修 報告Ⅲ

三豊市議会公共施設再配置特別委員会の視察研修最終日の3件目である、埼玉県深谷市における『マイナス入札の取り組み』の報告をします。

 

深谷市は、平成18年に1市3町の合併により新「深谷市」として誕生した。人口は約142,000人、面積は138.37㎢で、東京都心から70㎞圏にあり、群馬県に接した埼玉県最北端に位置する。近代日本経済の父と言われる渋沢栄一の生誕の地であるとともに、武蔵武士の鑑と称される畠山重忠の出身地であるなど、歴史に少なからず影響をあたえた興味深い土地柄である。

深谷市企画財政課公共施設改革推進室の大野氏より説明をいただいた。

マイナス入札のきっかけは、公共施設適正配置において施設の再編を進める中で、施設を廃止しても建物を解体しない限り建物は残り続ける。仮に市で解体して更地にしても、特に市街化調整区域は不人気で、必ず売却できるとは限らないとの問題を解消するために取り組んだ。

先行事例に北海道室蘭市があった。調査して弁護士に相談すると適正な対価であれば法に触れないとの返答があった。そこで、深谷オリジナルの制度構築をすることとして、予定価格をマイナスに設定した『建物解体条件付き入札』に着手することを決定した。

マイナス入札の制度とは、建物解体費が土地評価額を上回る場合、その差額を市が負担する仕組みだ。落札金額がプラスの場合は【売買契約】となり、マイナスの場合は【無償譲渡契約】となる。落札金額がマイナスの場合は、議会の議決が必要である。議決後本契約が行われ、落札者による解体工事確認後、市が落札者へ負担金を支払うとともに、契約保証金の還付並びに土地所有権移転登記が行われる。

マイナス入札には 費用面と時間面、+α の3つの効果がある。

費用面では ①入札執行時の直接的な削減効果━『一般的な売却』では市の積算による算出であるため高額となるが、『解体条件付き入札』では民間ベースの建物解体費となるため、民間ノウハウを活用した直接的削減効果が見込める ②市の事務効率化による削減効果━『一般的な売却』では市が建物解体業務+土地売却事務を行うが、『解体条件付き入札』では民間で解体するため工事業務の削減ができ土地売却事務だけの事務負担に削減できる

時間面では ①解体工期の短縮 ②工程間の短縮 ③よって全期間の短縮 が実現できる

+α の効果は 土地活用を前提で応札するため、更地後の売却不成立の回避効果があるほか、未利用であった私有地が速やかに活用され、固定資産税の増や管理費用負担削減の効果がある。

制度構築にあたってのポイントは ①予定価格の設定(もっとも時間をかけ客観性を重視) ②入札保証金、契約保証金、違約金の設定(土地の評価額に対して設定) ③用途制限(初回は住宅または共同住宅としたが制限は難しいため、2件目からは用途制限を付けず「土地利用計画書」の提出を求めた) がある。

その運用に当たっては ●「入札参加申し込みの期間」入札公告から入札参加申し込みの期間は、十分に確保すること(2か月間) ●「解体する建物の確認」解体する建物は、現地と建築図面を十分に確認すること ●「入札参加資格審査」確実な契約の履行を確保するために、契約の相手方として適正かどうかを慎重に行う(買戻し契約は必須) に十分に留意した。

マイナス入札実施の対象物件の決定は、過去2回建物活用型で入札公募したが不調であるとともに旧耐震の建物であることや、老朽化も著しく進行している旧中瀬小学校体育館敷地とした。この地は、都市計画区域外のため利用の自由度が高いこともあった。平成30年に実施され、予定価格▲13,406000円に対し落札金額は▲7,950000円で、全国初のマイナス価格での落札決定となった。2件目の実績は、令和2年に実施された旧本郷農業総合センターで、予定価格▲17,282000円に対し落札金額は▲17,080,000円の落札決定となった。

現時点でマイナス入札の実施は、全国で平成30年から令和3年までの間に5件あり、4市において行われたが、結果としてマイナス入札が成立したのは深谷市と室蘭市のみであった。他市の例は大幅なプラス入札となっている。

 

深谷市では、公共施設適正配置啓発資料の作成を推進しています。市財産処分には市民理解が欠かせません。そのために市民向けの漫画を作成したり、職員向け庁内啓発資料を作成するなどして、長期的な取り組みを進める上で意識の醸成に注力しています。そこでうったえているのは、「一人ひとりが今の現状を理解し、住みよいまちにする努力が必要なんだということです。私たちの住んでいるこの場所はこれからどうなっていくのかではなく、自分たちが今できること、すべきことを一人ひとり考え理解・協力をしていくことなんだということ」です。

深谷市職員さんからの説明の最後に、「自分事として考える」「経営的発想をもってできる理由を考える」「当たり前とされていることに疑問を持つ」の言葉に、「やればできる」「やらなければならない」という、活力を持った深谷市の姿が印象に残った研修でした。

以上で、3回に渡った報告を終わります。

公共施設再配置特別委員会 視察研修 報告Ⅱ

2件目の視察研修は静岡県焼津市です。

 

焼津市は、平成20年に1町を編入し人口約137,000人、面積70.30㎢となっている。かつては、遠洋漁業の基地として全国有数の水揚げを誇っていたが、現在は都市化が進み『第6次焼津市総合計画』のもと、市民や事業者、行政が相互協力・連携し「より魅力あるまちづくり」を進めている。

焼津市の公共施設マネージメントの取り組みに至る経緯は、平成20年度ころ厳しい財政状況の中施設の老朽化が進行し、少子高齢化や人口減少等の社会環境の変化への対応が求められるなど、公共施設を取り巻く環境は厳しいものとなっていた。庁内においては、公共施設のデータが一元化されておらず、所管部署ごとによる分散管理体制となっていることが、企画担当・行政改革担当・建築担当部門では課題認識されていた。

このような状況の中、平成20年に耐震対策計画を策定していた当時の担当者が、市有施設の抱える課題に気づいた。●市有施設の老朽化 ●厳しい財政状況 ●一元化されたデータの不在 ●所管部署ごとに分散管理体制 ●社会情勢、ニーズの変化への対応 このような課題解決に向けた取り組みはないのか?子や孫の世代にそのまま引き継ぐのか?というものだった。

公共施設マネジメントを始める際に留意したことは ①施設所管課と資産経営課が共に考える仕組みづくり ②管理の徹底 ③経営的な視点の導入 であった。具体的な進め方は、総合的かつ計画的に管理するための大方針として、『公共施設管理計画』を策定し、体制構築、評価、個別方針、実践 とすることとした。

推進環境の整備は、縦割り構造を発想の転換により、横断的な複合化・多目的利用等データを一元化し、横断的な企画・運営・管理と効率的な財産移管の実施を行うことから始めた。そのうえで、財政担当・公共建築担当・公共施設マネジメント担当の連携による推進体制の強化を行った。

組織体制は、トップマネジメント(首長のリーダーシップ)により庁内検討組織の推進体制の整備が行われた。市長を議長とする「行政経営会議」を最終政策等決定会議と位置づけ、その下に行政経営部担当副市長を本部長とする「公共施設マネジメント対策本部」を置き、次に行政経営部長を委員長とする「公共施設マネジメント検討委員会」を、そして個別施設計画アクションプランの検討をする「個別施設計画アクションプランに基づく個別、専門部会」を配し構築した。

「個別施設計画アクションプランに基づく再編実績として  【統合・集約等】では ●新庁舎の再編(現地での建て替え) ●和田公民館の再編(隣接する小学校校舎との複合化) ●放課後児童クラブの再編(民間施設活用による増設) 他がある。  【維持管理・運営】では ●文化施設の管理運営に関する改善方針 ●図書館、公民館、体育館等のあり方及び改善の方針による、事業収益増や経費削減等の実績がある。

 

焼津市がこれまでの実績を上げるには、市民の大小様々な意見や要望に対して、地道に対応し、積み重ねてきた成果なのだろうと思います。当時の担当職員の危機感に応え、市のトップである市長のリーダーシップにより、全庁内上げた組織としての公共施設マネジメントの取り組みに向け、大きく展開していったことを理解することができました。行政の、現実を見極め未来を見通す感性と理性の重要性を強く感じる研修となりました。

 

 

公共施設再配置特別委員会 視察研修 報告Ⅰ

三豊市議会公共施設再配置特別委員会の視察研修に、令和4年(2022)11月7日(月)~9日(水)の3日間参加しました。視察研修先は、1日目に滋賀県高島市、2日目に静岡県焼津市、3日目に埼玉県深谷市の3市です。

 

高島市は、平成17年に5町1村の合併により誕生した。現在人口は約47,000人で、面積は滋賀県で最も広い693.05㎢(琵琶湖面積181.64㎢含)だ。

『公共施設再編の取り組みについて』高島市総務部行財政管理局行政管理課の上原課長と鈴木氏から説明をいただいた。

合併により同種・同機能の公共施設を有することとなった。そこで平成26年に高島市公共施設等総合管理計画を策定した。計画の趣旨は、旧6町村から引き継いだ各施設が、全国の人口規模類似団体や県内他市平均と比較して大変多い状況となっている実状と、人口減少や少子高齢化、地方交付税・市税の減少、扶助費等の義務的経費の増大が決定的状況にあり●施設の効率的かつ効果的な維持修繕 ●保有する公共施設等の総量の最適化 等が必須であることから策定することだ。

計画期間と削減計画は、平成27年度から令和26年度までの30年間で延べ床面積を半分にする計画で、令和6年度までに10%、令和16年度までに20%、令和26年度までに20%とし、50%の段階的計画をたてている。第1段階目標である令和6年10%削減目標は、現時点で5%強程で合併特例債期限が迫る中、旧町村とのバランスに苦慮している現状だ。

公共施設等のマネージメント推進の基本方針は ①次世代の継承可能な施設保有(施設保有量の縮減) ②将来にわたり必要な施設の計画的な維持更新(長寿命化の推進)として、 公共建築物(ハコモノ): ●新規整備は原則として行わない ●施設の更新(建て替え)は複合施設とする ●施設総量(延べ床面積)を縮減する  インフラ資産: ●ライフサイクルコストの縮減に努める  こととした。

この方針に基づき、各施設ごとの再編の方向性等を示した「高島市公共施設再編計画」を、平成27年に一般財団法人地方自治研究機構と共同で策定した。また、インフラ資産は将来負担コストの低減と財政負担の平準化を図るため、順次種別ごとに長寿命化計画を策定している。

個別計画における再編パターンの考え方には ①公共施設の譲渡・廃止 ②公共施設の多機能化(集約化・複合化) ③用途を変更し存続する公共施設(転用) ④維持する公共施設 があり、副市長をトップとして市行財政改革推進本部(計画構築・推進管理)がマネージメント機関となっている。

公共施設再編の推進は、市民アンケートによると総論賛成だが各論反対は根強いため、総論の理解を得ながら各論を進めなくてはならない。そのために、受益者だけでなく負担者の意見を聞く必要があり、【子どもや孫の世代につけを回さない】ことに尽きる。

職員一人ひとりがどうすればよいかを考えねばならないため、そのための人材育成が求められる。今後とも職員一丸となって取り組んでいく。

 

高島市のおかれた現状は、三豊市を鏡に映したような実態であり、合意形成の厳しさや痛みを突き付けられました。取り組みの中に二元代表制における機関としての議会の関りが薄いように感じたことで、三豊市議会としての機関組織としての取り組みの重要さを再認識した研修でした。

 

 

 

三豊市議会会派清風会 研修報告・パート2━③

研究フォーラム2日目に行われた課題討議の報告をします。「地方議会のデジタル化の取り組み報告」が、コーディネーターを谷口尚子氏[慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネージメント研究科教授]として、金澤克仁氏[取手市議会議長]、板津博之氏[可児市議会議長]、林晴信氏[西脇市議会議長]の事例報告者3名で行われました。

 

金澤氏  『ICT活用 いつでも・どこでも議会の機能を維持向上』の取り組みの報告があった。議員の3割近くが女性議員であったことから議会改革の土壌があった。さらに、議会事務局も含め議会愛が強かったため、デジタル化に向けての合意形成がスムーズに進んでいった。

取手市議会における議会運営のデジタル化・住民とのコミュニケーション強化の主な取り組みは、①オンライン事前説明:7日前招集告示。その3~4日後、オンラインで市長や部長が提出予定議案の詳細説明。そのことによって、議員は、議案の事前調査が活発になる。また、聞き逃し、聞き間違いなどがなくなり、議論の質向上に寄与  ②コロナ禍、学校休校により育児しつつ、介護しつつ、また、濃厚接触者により自宅待機でもオンライン委員会に出席し審査 ③医療従事者とは平日の夜間。市PTAとは土曜日の午前中など、情報を聞きたい相手に合わせて開催

誰もが政治参加しやすい社会を目指し、オンライン本会議を可能とするよう、多くの議会からも自治法改正の意見書をまとめて欲しい。

 

板津氏  『可児市議会の取り組みについて』の報告があった。コロナ禍における議会報告会の開催で議会グループウエアを導入した。Withコロナ時代における議会報告会の在り方として、議場において十分な座席間隔を確保し人数を限定して市民に参加してもらい、一部議員はオンライン会議システムを活用して参加。一歩進めて完全オンラインの議会報告会に着手した。

デジタル化による議会改革の方向性は、市民アンケートの結果を基に行っている。

 

林氏  『議会は住民自治のプラットフォーム!を目指してICTを何のために使う? 議会DXへの取り組み』の報告があった。議会DXへの取り組みは、防災訓練と一緒だ。シミュレーションしなければいざというときに使えない。

自治体DXは、行政も議会もDXしなければならない。自治体DXはデジタルによる、多機能化と効率化。議会DXはデジタルによる議会の効率化と、より多くの多様化した民意の集約化だ。それは、情報の共有・住民参加・議会の機能強化であり、人々の生活をより良いものへと変革し、住民の福祉の増進につなげていくためのものだ。

オンラインは時間と距離を超越する。そのためには広聴・広報の戦略が必要だ。

 

議会DXを、住民の福祉の増進と議会への信頼度upに活用するためには、議会の広聴・広報戦略に基づいたデジタル化の取り組みに向けて、走り出さなくてはならないことを痛感した事例報告でした。

以上で会派清風会の研修報告を終わります。

 

三豊市議会会派清風会 研修報告・パート2━②

研究フォーラム1日目のパネルディスカッションは、「地方議会のデジタル化の現状・課題と将来の可能性」をテーマに、人羅格氏[毎日新聞社論説委員]がコーディネーターとなり、岩﨑尚子氏[早稲田大学電子政府・自治体研究所教授]、牧原出氏[東京大学先端科学技術研究センター教授]、湯淺墾道氏[明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授]、寺沢さゆり氏[長野市議会議長]の4名のパネリストで行われました。

 

岩﨑氏  コロナ禍の中で機能しない議会とはいったい何なのか。この現状からデジタル化についての議論が出されるのは必然だ。その進むべき方向性は、①議会のデジタル化の目的は、あらゆる災害にも議会機能を十分に発揮し、住民とのコミュニケーションを確保すること ②誰も取り残されないデジタル初回に向けて議会が果たすべき市議会のリーダーシップ ③市議会が域内のコミュニティを取りまとめる役割を果たすために必要な改革(DX) が考えられる。

議会のデジタル化を推進するための提言として、●非接触社会への対応:有事と平時における議会の役割 ●新デジタル人材育成:リスキング、技術導入、誰も取り残されない共助社会 ●指導的地位を占める女性割合を増やすポジティブアクション実現するためのデジタル化の促進と国連SDGsの実装へ ●最適なテレワークBCP、介護、育児等への多様で柔軟な選択肢こそ、少子・高齢・人口減少社会の解決モデル ●新デジタル社会の形成に強力な政治リーダーシップで、地方の経済格差、情報格差の解消を優先せよ

 

牧原氏  地方議会のデジタル化として、審議のオンライン化とデジタル化への対応の提言があった。国の政策としてのデジタル化は、①人口減少への対応としての圏域連携、公共私連携による「スマート自治体」へ ②新型コロナへの対応としてのリモートの推進 この2つの大きな課題の鍵となるのがデジタル化だ。

デジタル化の今後として、●市民からのアクセスが容易なデジタル化は不可欠であり、市民への「議会報告会」こそハイブリッド開催などデジタル化になじむ ●議員の担い手不足の面からも、議場外からの参加も可能とするオンライン議会の可能性は大きい ●自治体全体のデジタル化と歩調を合わせるべき ●デジタルのリテラシーと法律は相性が悪いことは十分に留意すべき

以上を踏まえ、地方議会のデジタル化に取り組むには、人材育成が重用であり元SEや地域のIT人材の活用が重用だ。

 

湯淺氏  議会におけるアナログの問題点とデジタルの可能性についての指摘があった。アナログな議会の問題は、●情報収集において客観的なデータが不足 ●意思決定や政策がデータ(エビデンス)に基づいていない ●意思決定や政策の根拠を説明できない ●決定過程が不透明 ●対面、口頭、物理的な場における全員集合の難 ●押印への形式的依存 ●危機に柔軟に対応できない ことだ。

議会のデジタル化の意義は、平時・災害時・コロナ禍にかかわらず議会機能を十分に発揮し、住民とのコミュニケーションを確保するなど、オンライン化で実現する可能性がある。また、議会Webサイト等を通じた活動によって、住民との関係の再構築が可能となる。面白い取り組みとして、アバターやフォログラム、ロボット等を駆使したオンラインによる会議のデジタル化も夢ではない。

 

寺沢氏  長野市議会のデジタル化への取り組み状況について説明があった。①平成28年:採決システムの導入 ②平成30年:常任委員会のインターネット中継を開始(録画) ③平成31年:議会活動にタブレット端末を導入 ④令和4年:市民と議会の意見交換会をオンラインで開催 ⑤令和4年:委員会のオンライン開催の導入

 

本来担うべき地方議会の機能とは何かを再考する機会となったとともに、それを実施・実現するためにデジタル化で「みえる化」することが、住民との関係の再構築につながることに気づかされたパネルディスカッションでした。

三豊市議会会派清風会 研修報告・パート2ー①

10月19日(水)と20日(木)の2日間、長野県長野市のホクト文化ホールで開催された『第17回全国市議会議長会研究フォーラム ━デジタルが開く地方議会の未来━』の報告をします。

1日目は、冨山和彦氏[(株)経営共創基盤グループ会長、(株)日本共創プラネットフォーラム代表取締役社長]の基調講演と、「地方議会のデジタル化の現状・課題と将来の可能性」のパネルディスカッションが行われました。

 

基調講演 「コロナ後の地域経済」

冨山和彦氏は、自身が60歳を機に、地域経済に密着した会社を支援するための企業を設立した。新型コロナが終息すると、これからは地域経済に大きなチャンスが訪れると考えていた。なぜなら、コロナ禍ショックでグローバル経済は脆いことが明らかになったからだ。また、破壊的危機は今後もかなりの頻度で発生する。さらに平成30年間に進んだ破壊的イノベーションの波は、コロナでもっと拡大・加速し、GX(グリーントランスフォーメーション)の波により、日本のグローバル企業の不振が明白となった。この激変に対応するには、ローカルな地域経済が強くなることだ。事実、観光や農林水産業が活発な地方は元気だ。

世界的に見ても、L型(ローカル)産業に移行した国は成長している。にもかかわらずいまだに東京中心のG型(グローバル)発想しかない。日本経済の低迷は、労働生産性が悪いことだ。それが良くならないのならば、経済付加価値を上げるしかない。地方では人手不足が決定的だが、だからこそチャンスだ。限られた人手でやっていかなければならないのなら、経済付加価値を上げるために必死で考えなければならない。

日本経済復興の本丸は、ローカル経済圏と中堅・中小企業経済圏が主流となることだ。そのためのポイントは ●労働生産性の低さとマネージメントレベルの低さこそが、変容による成長の可能性を大きくする ●エッセンシャルワーカーこそが、これからのコア中間層を形成するべきであり、L型産業こそエッセンシャル産業だ ●L型産業のCX(コーポレートトランスフォーメーション)経営と、桁違いに安いコストで最先端のデジタル技術を使い倒せる、クラウドDX時代で大きなチャンスが到来

具体的取り組みとして、『みちのくグループ』のバス事業を連携させた事例がある。「分ける化」「見える化」による地道な改善改良の徹底の先にDX的解決が自然に浮かびあがってくる。その結果、再編によるベストプラクティス(最も優れた工程・手法)の横展開やスケールメリットの追及で、単独では成しえない改善効果を生み出した。次なる取り組みとして、DX活用など新たな取り組みによる生産性向上に向け、空中戦力も活用し人手不足・高賃金時代を逆手にとって、さらなる成長を目指す。

おわりに、CX→DX→IXによってローカル産業、公営企業体の生産性革命を実現していく可能性について。このようなシンプルで当たり前の取り組みが、ローカル経済圏でなぜできていないのか。 ●経営人材の問題 ●経営体の動機づけの問題 ●新陳代謝が進まない問題 ●地域経済密度の問題 がある。これらの問題を克服し、DXの時代に進んでいかなくてはならない。そのためのデジタルだ。地方経済は宝の山だ。コロナ後の地域経済こそが日本を元気にすると確信している。

 

デジタル活用によって地方を元気にする、具体的実践例を示していただきながらの基調講演は、CXなくして成しえないことを気づかせていただく機会となりました。実践あるのみです。