「横浜市長である私が、何故選挙区民でもない四国・高松の皆さんの前で講演をするのか。当然、物事には経緯と主旨があります。」
誰もが抱く疑問に対し、この言葉から始まったこの講演会は、「万縁の会」四国懇談会の主催による、横浜市長である中田宏氏の特別講演会でした。
11月26日(日)、香川県社会福祉総合センターで、「横浜版ニッポン再構築」のテーマで開かれました。
松下政経塾で学び、20代で国会議員になり三期務めました。その間いつも考えていたことがありました。そもそも国会議員は何のために、何をするためにあるのかと言うことでした。
私は、政治を機能するために政治家になったはずでした。政治を機能するとは”適切なことを適切なときに決定する”ということです。
様々なアイデアや、考え、想いが国民の皆さんの中にあります。それを汲み上げ、決定してゆくことだと思っています。愚痴と不満を言うだけではだめだ、いやだ、ということなのです。
よく、政治にはお金が掛かりますかと聞かれます。
政治活動をするには、適正な経費は必要です。しかし、おにぎりの中に「一万円札」を仕込むようなお金は必要ありません。お金は特別なことには掛かりませんが、当たり前のことには掛かります。
ですから、政治活動費の得方が問題なのです。
企業や、一人の支持者に偏るととうしてもそちらに引きずられ、政策や判断がぶれてしまいます。
そうならないためにも、広く多くの皆さんから少しずつ援助を頂きたいと言うことです。
私は、政治家です。選挙区の人のためだけに止まるのではなく、すべての人のためにあるのだと思っています。ですから、選挙区だけに止まるのはやめようと決めました。
今、ここにいるのもそのためです。
横浜市は政令市政都市で、3兆5千億円の予算規模です。
この横浜というまちで、何のために市長をしているのかと言うことですが、人口360万人の大都市の市長となって、日本にとって必要なことを横浜の中でやってゆこう、日本の行く末を創ってゆこうと考えているからです。「日本社会にとって、役立つモデルを創ってゆく」ことなのです。
これを支えるのは、有権者がどのような視点を待って行政に向かうのかが、重要なことだと思っています。有権者が利口にならなくてはならないということです。
「万縁の会」のお誘いで、ここにお集まりの皆さんが良心と見識の源であると感謝しています。
今、子どもに係わる悲惨な事件が発生しています。
事件を防ぎ教育を建て直し、福祉を充実することはやらねばならないことです。
すでに様々な政策が取られています。お金だけがあれば、できるのかといえばそうではありません。
しかし、経済的基盤があってこそできることが沢山あります。
ですから、経済の活性化はとても重要なのです。
日本を取り巻く負の要因として、外的には”物を作っても輸出できない”、内的には”人口減少社会”があります。これを変えるために行われているのが構造改革や政策議論なのです。
これから求められる方向は、付加価値をつけた経済を営むための方向転換をしながら、人口減少を止める政策を採らなければならないということです。
横浜市も、税収が最盛期から700億円減の6.200億円となり、社会福祉費は1.200億円増えているのです。
そして、職員数は一般職が3万人、教育関係が2万人の計5万人いるのです。
現実をわきまえて、工夫し何をやってゆくのかが問われているのです。
特殊勤務手当てを一端ゼロにして、本当に必要なものだけを再度復活しました。
それから、水道事業ですが、これからは一人当たりの水道収入が増えることはありません。人口が増えることもありません。そして、料金を値上げすることもできません。
このことを前提に水道事業を組み立てなくてはならないのです。
この方針の結果、横浜市の水道事業は80億円の累積赤字から、150億円の累積黒字になったのです。
「持続可能な仕組みにしてゆく」。これは、歳入の増えない時代にサービスの低下を起さないようにするといyことなのです。
更に、敬老バス(パス)の70億円の事業の見直しがあります。この見直しは、この事業を引き続き継続するために見直すのです。所得に応じた負担も求められると考えています。
ゴミを減らすための「G30計画」を推進しています。ゴミを30パーセント減らすというものです。
職員からは最初、すべての市民に伝えることは不可能だといわれました。それでは時間をかけて伝えましょう。2年間をかけて伝えましょうということにしました。平成17年4月から、ゴミの分別を開始しました。
行動すれば市民は賢くなるのです。
できると信じて行動すると、34パーセントのゴミの量が減ったのです。
この成果によって、ゴミ焼却炉に費やす経費1.100億円と、毎年の維持費30億円が削減できるのです。
市の中で、工夫をして色々やってきました。公共とはどうあるべきかを考え、そした変えてきました。
そのなかで確信したことは、公共サービスイコール行政サービスではないということです。
更に言うと、行政が責任を負うということと、行政自身がやるということは違うということです。
この思いの実現を、全人格をかけて、そして理屈・感情のすべてをかけて対峙し取り組むことを覚悟しています。
何故やるのかは、ただ生き恥をさらしたくない!その一念です。
だから、今を一生懸命やりたいと思っているのです。
青インクの万年筆で思いを認めていたなら、涙で文字が滲んでいたでしょう。
ブログでそんな偽りのない思いを伝えることのできる表現方法ががあればいいのにと思っています。
中田宏さん、ありがとうございました。あなたはすごい。あなたは生きている。