研究フォーラム1日目のパネルディスカッションは、「地方議会のデジタル化の現状・課題と将来の可能性」をテーマに、人羅格氏[毎日新聞社論説委員]がコーディネーターとなり、岩﨑尚子氏[早稲田大学電子政府・自治体研究所教授]、牧原出氏[東京大学先端科学技術研究センター教授]、湯淺墾道氏[明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授]、寺沢さゆり氏[長野市議会議長]の4名のパネリストで行われました。
岩﨑氏 コロナ禍の中で機能しない議会とはいったい何なのか。この現状からデジタル化についての議論が出されるのは必然だ。その進むべき方向性は、①議会のデジタル化の目的は、あらゆる災害にも議会機能を十分に発揮し、住民とのコミュニケーションを確保すること ②誰も取り残されないデジタル初回に向けて議会が果たすべき市議会のリーダーシップ ③市議会が域内のコミュニティを取りまとめる役割を果たすために必要な改革(DX) が考えられる。
議会のデジタル化を推進するための提言として、●非接触社会への対応:有事と平時における議会の役割 ●新デジタル人材育成:リスキング、技術導入、誰も取り残されない共助社会 ●指導的地位を占める女性割合を増やすポジティブアクション実現するためのデジタル化の促進と国連SDGsの実装へ ●最適なテレワークBCP、介護、育児等への多様で柔軟な選択肢こそ、少子・高齢・人口減少社会の解決モデル ●新デジタル社会の形成に強力な政治リーダーシップで、地方の経済格差、情報格差の解消を優先せよ
牧原氏 地方議会のデジタル化として、審議のオンライン化とデジタル化への対応の提言があった。国の政策としてのデジタル化は、①人口減少への対応としての圏域連携、公共私連携による「スマート自治体」へ ②新型コロナへの対応としてのリモートの推進 この2つの大きな課題の鍵となるのがデジタル化だ。
デジタル化の今後として、●市民からのアクセスが容易なデジタル化は不可欠であり、市民への「議会報告会」こそハイブリッド開催などデジタル化になじむ ●議員の担い手不足の面からも、議場外からの参加も可能とするオンライン議会の可能性は大きい ●自治体全体のデジタル化と歩調を合わせるべき ●デジタルのリテラシーと法律は相性が悪いことは十分に留意すべき
以上を踏まえ、地方議会のデジタル化に取り組むには、人材育成が重用であり元SEや地域のIT人材の活用が重用だ。
湯淺氏 議会におけるアナログの問題点とデジタルの可能性についての指摘があった。アナログな議会の問題は、●情報収集において客観的なデータが不足 ●意思決定や政策がデータ(エビデンス)に基づいていない ●意思決定や政策の根拠を説明できない ●決定過程が不透明 ●対面、口頭、物理的な場における全員集合の難 ●押印への形式的依存 ●危機に柔軟に対応できない ことだ。
議会のデジタル化の意義は、平時・災害時・コロナ禍にかかわらず議会機能を十分に発揮し、住民とのコミュニケーションを確保するなど、オンライン化で実現する可能性がある。また、議会Webサイト等を通じた活動によって、住民との関係の再構築が可能となる。面白い取り組みとして、アバターやフォログラム、ロボット等を駆使したオンラインによる会議のデジタル化も夢ではない。
寺沢氏 長野市議会のデジタル化への取り組み状況について説明があった。①平成28年:採決システムの導入 ②平成30年:常任委員会のインターネット中継を開始(録画) ③平成31年:議会活動にタブレット端末を導入 ④令和4年:市民と議会の意見交換会をオンラインで開催 ⑤令和4年:委員会のオンライン開催の導入
本来担うべき地方議会の機能とは何かを再考する機会となったとともに、それを実施・実現するためにデジタル化で「みえる化」することが、住民との関係の再構築につながることに気づかされたパネルディスカッションでした。