地域科学研究会 セミナー研修報告・第3部

第3部  小田急電鉄(株)経営戦略部次世代モビリティチーム 藤垣洋平氏 から、 「共通データ基盤『MaaS Japan』で実現できる MaaSアプリ&サービス」の講義があった。

小田急は、90年間積み上げてきた安心・快適という普遍的な価値を、これからのテクノロジーを生かして、「会いたいときに、会いたい人に、会いに行ける」、次世代の”モビリティ・ライフ”をまちに生み出していこうと取り組んでいる。

MaaSのとらえ方は、2つの類型に分けて考えることができる。類型1として、複数のサービスを統合した「統合型」と、類型2として新しい柔軟な交通サービスの「新サービス型」がある。「統合型」は、複数の交通サービスを対象とした検索・予約・決済管理等を一体的に提供するサービスで、統合的な検索サービスや一体的な決済サービス、定額制パッケージ、スマートフォンアプリがある。「新サービス型」は、利用者のニーズに柔軟に対応できるICTを活用した新しい交通サービスで、オンデマンドバスやカーシェアリング、自動運転サービスがある。

MaaSの活用に取り組む上での考え方は、「提供しているサービス」ではなく、「達成される状況」をもとにして考えれば、人や地域によるそれぞれに相応しい形が見えてくる。利用者の移動特性や置かれている都市環境を踏まえ、利用者にどのような移動が可能になり、そのサービスに対してどう感じるか、どう感じることを目指して設計されているのか、という考え方が大切だ。MaaSの根本にある考え方をもとにしたサービス設計は、「提供されるサービス(商品)」だけでなく、「どのようなシーン(体験)」であるかをトータルデザインすることだ。

そこから生まれたのが、MaaSアプリ「EMot」だ。 ”もっといい「いきかた」” のために Emotion(感動させる)とMobility(モビリティ)の融合によって、日々の行動の利便性をより高め、新しい生活スタイルや観光の楽しみ方を見つけられるアプリとして活用してほしい。現在、「EMot」を使った、観光型MaaS「デジタル箱根フリーパス」と郊外型MaaS「新百合ヶ丘エリア 買物利用者向けバス無料チケット」、MaaS×生活サービス「飲食サブスク」の3つのタイプの実証実験を行っている。

「共通データ基盤 MaaS Japan」は、データ基盤を、小田急以外の事業者や自治体のMaaSにも活用できる。他の交通事業者・自治体等がMaaSの実証実験を容易に実施できる環境を提供する。これまでに着手している「MaaS Japan」を活用・連携したアプリ展開は、①海外からの旅行者が、使い慣れたアプリで日本を周遊できる環境を目指すために、WhimとZipstrの海外アプリと連携 ②東京都「MaaSの社会実装モデル構築に向けた実証実験」として、立川駅周辺エリアの「お出かけ」をサポート などがる。

「EMot」も「MaaS Japan」も、交通サービスを適材適所で組み合わせることで、自家用車と同等以上の便利さを提供し、交通サービス利用中心のライフスタイルを提案するものだ。MaaSを通じて、「会いたいときに、会いたい人に、会いに行ける」次世代の”モビリティ・ライフ”を社会に生み出していく。

 

行きたくなるようなワクワクする、バショやコトがあり、そこで人との出会いがあるまち。住みたくて、住み続けたいまちにするために、ストレスなく移動できる環境を構築していくことが地域創世につながっていくことを、再確認できた講義でした。