三豊市議会永康病院調査特別委員会視察の2件目の「下呂市立金山病院」について、研修報告をします。市立金山病院への視察研修の目的は、8月7日(月)に開催した三豊市議会議員研修会で、講師としてお招きした城西大学教授伊関友伸(ともとし)先生が手掛けたローコスト病院がいかにして実現したのかを検証するためです。
岐阜県下呂市は県中東部にあり、平成16年に萩原町、小坂町、下呂町、金山町、馬瀬村の5町村が合併して人口39,800人余、面積851㎢の、全国で42番目に大きな面積のまちとして誕生した。市の91%が山林を占め、わずかな降雨でも交通が途絶えることもある地形と自然環境の中にある。下呂市の人口は、市発足時から減り続け、現在33,000人余となっており、人口構成は65歳以上高齢者が40%を超えている。金山病院がある金山地域の人口は6,200人余(内の18%)で、その中で65歳以上高齢者が2,600人(41%)、75歳以上高齢者1,550人(25%に迫る)の、未来の日本が迎える超高齢社会(2025年問題)の先を行く地域だ。
下呂市は、市立金山病院と県立下呂温泉病院、市立小坂診療所の公立医療機関がある。金山病院と下呂温泉病院とは、約30㎞(車で30分)の距離があることで『地域分担』をするとともに、県立病院が急性期医療を担う『機能分担』を行っている。
金山病院の新築移転は、金山地域以外の市民入院利用が約6%と少ないことや、人口減少する中県立病院の新築移転の計画があったことなどから、統合による診療所化などのさまざまな意見があった。しかし、救急指定病院としての役割など市民の安心安全を守るため、新築移転が実施された。しかし、その実現には財政的にも極限までの建築費削減が求められた。そのような折、県内の民間医療機関がNPO法人医療施設近代化センターからアドバイスを受け、建設コストを数億円削減したことを知り相談したところ、協力してくれることとなり、平成21年に業務委託契約をした。
先ず、基本計画の見直しから入った。当院の決算規模から事業費は20億円以内、延床面積は7,000㎡以内を目標に平面計画の作成を行った。 ●基本計画(建物事業費):当初計画は27億9,200万円だったが、変更後計画は19億3,400万円とした(本体・外構・解体) ●設計(事業費):1億8,600万円を9,700万円とした(基本・実施・管理) ●延床面積:8,255㎡を6,648㎡にした
設計業者の選定は、「日本一・ローコスト・高価値の病院づくり」を目指し、公募型プロポーザル方式により実施。平成21年に審査委員会設置要綱を制定し、委員9名と決め城西大学伊関先生が委員長となった。施工業者の選定は、基本設計を終えた時点で病院建設費の概算事業費を算出し、建設を請け負う施工業者を公募型プロポーザル方式により選定する二段階発注方式を導入。これは実施設計や詳細設計を進めるうえで、施工業者のローコスト建築の技術を、設計業者が共有し、設計に反映することを目指した。 *ローコスト建築については、8月9日付の私のブログに研修報告として掲載している
平成21年 公募型プロポーザルにより設計業者を選定
平成22年 公募型プロポーザルにより施工業者を選定
平成23年 建設工事に着手
平成24年8月 新病院開院
平成28年度決算では、総収益15億62,988千円に対し、総費用14億70,155千円で、初めて経常損益92,833千円の黒字となった。そのため、繰入金基準外分の42,250千円を一般会計へ変換するまでになっている。これも、ローコストによる返済金の負担がすくないことによる。
私たちの研修に対し、最初から最後まで対応して頂いた須原貴志院長の、地域医療を守ろうとする熱き思いがビンビン伝わってきました。いかにこの病院が必要とされているのか、いかにして健全経営に向かっているのかを、詳しい資料に基づいて熱く語ってくださいました。院長先生直々に、伊関先生とともに実現した愛すべきローコスト病院を、隈なく案内してくださいました。
またしても、「ここにこの人物あり」を見せつけられた思いです。誰にでもできることではないのかもしれないが、誰かがやれるであろう可能性の現実に見た研修でした。
永康病院調査特別委員会の今後の調査研究の指針となる、心強い2件の研修でした。