平成29年度三豊市議会議員研修会報告

平成29年度三豊市議会議員研修会を、8月7日(月)に開催しました。昨年は、合併10周年記念として本市出身で当時NHKニュースウオッチ9のキャスターであった河野憲治氏を招いての、市民も参加する公開研修会として開催されました。本年は、私が委員長を務める永康病院調査特別委員会が中心となり、議員と市関係者を対象とした研修会としました。

市立永康病院の病棟建替えの方向性を調査するための研修会として、城西大学経営学部教授 伊関友伸(ともとし)先生においでいただき、『試練の時代の自治体病院経営』と題して講演をしていただきました。

 

医師・看護師不足は病院経営にとって深厚な問題だ。これまで国は、昭和40~50年代の医科大学の新設ブームの反動で、医師数を抑制する政策を行ってきた。その上に、医療の高度・専門化や人口の急激な高齢化等の影響で、ますます不足することとなった。また、2004年からの新臨床研修制度によって、若い医師の多くが都会の大病院を研修先に選ぶ結果となり、医師の集まるところとそうでないところの、病院の二極化現象が明確となった。

医師・看護師が集まる病院は収益が上がり、再投資がしやすいが、そうでない病院は収益が上がらず、再投資ができないため衰退することとなる。病床規模別100床当たり常勤医師数は、500床以上の大規模病院は大幅に増加しているが、病床数の少ない病院はほぼ横ばい、ないしは減少している。

このような状況にあって、地方病院、中小病院は病床規模は小さく、医業収支比率も悪化している。さらに、これから医師だけでなく看護師不足は一層深刻化し、運営できなくなる病院もでてくる。

さて、自治体病院経営で、一般会計繰入金について考える。総務省は一般会計繰入金を入れた後の経常収支での黒字を重視している。税金投入ゼロを求めているわけではない。

次に、地方における医療・福祉分野の雇用は重要である。地方においてこの分野は、唯一就業者が増加している。高齢化が進む地方において病院や福祉施設は、将来を見込める産業であり、産業振興の観点で病院や福祉施設を考えるべきだ。

さらに、地方の自治体病院は、都市と地方の税の格差を埋める再分配機能を有している。なぜなら、住民の命を守る病院をつくり、医療者を雇用して医療を提供することができるため、他の公共施設より意義は大きい。

地方の自治体病院の支出の約6~7割は人件費で、地方の重要な雇用先である。また、食材や物品購入で地域に落ちるお金も大きい。そして、医師が勤務して病院が機能すれば、都市部が相当額を負担する診療報酬のお金が、地方交付税として交付され、職員の人件費として移転される。繰出し金が巨額となり、自治体財政が破綻するのは問題だが、交付税+αの繰入金で病院を運営できるなら問題はない。なぜなら、地方の医療機関(病院)は生命線であり、なくなれば、その地域の住民は生活できなくなるからだ。

三豊市の市立2病院(永康病院・西香川病院)の経営について考える。この2病院に対して一般会計繰入金が入っている。永康病院に3条繰入金2億6600万円余、4条繰入金1500万円弱、合計2億8000万円余。西香川病院に3条繰入金1億8500万円余、4条繰入金1800万円余、合計2億300万円余。その一定割合は地方交付税の措置がされている。三豊市病院事業会計に約10億円の現金があり、指定管理者(三豊・観音寺市医師会)も相当額の内部留保を有していると推測される。

一方、2病院とも将来的に医師・看護師の医療人材の確保が不透明で、特に、永康病院については数年内に看護師の大量退職が予定されている。これに対して、永康病院では、医師・看護師確保に対する取り組みを行っている。しかし、現在の院長、事務の体制でできるのか。永康病院は存続できるのか?

詫間町地域の民間病院の運営継続ができるか不透明なため、万一の場合、公立病院があれば安心だ。永康病院の存続の方法は、いくつかの方向性が考えられる。●市内の二次救急医療を担う病棟は老朽化しており、早急に建て替えが必要である。●三豊市地域医療あり方検討委員会の答申の通り、2病院の経営統合も選択肢の一つだ。統合することで病院の格が上がり、医科大学からの医師派遣の可能性が高まる。また、国の医療介護総合確保基金の補助、企業債への地方交付税措置が期待できる。新たに統合再整備する病院の設置場所については、市民の利便性を考慮し、コンセンサスの得られる立地を検証し、市民の意見を反映しながら検討を進めることが必要だ。しかし、組織文化の異なる病院の統合は簡単ではない。1+1=2ではなく、1+1=0.8~1となることも多い。

永康病院単独での建替えの場合は、病院のマネージメント力を向上させることが絶対に必要だ。なぜなら、建物は新しくなったが、医師・看護師が勤務せず、病院として存続できなく可能性もある。そのために、院長のほかに病院経営の責任者として病院事業管理者を置き、医師の招聘や病院のマネージメントを担ってもらうことも必要だ。

病院経営を考えれば、病院の建設費はできる限り少ない方がよい。研修や接遇改善など人材に投入するため、ローコストの病院建築が不可欠だ。現在地での50床の病院整備で35億円は高すぎる。別の場所(更地)に100~120床のコンパクトでローコストの病院を建設する方法もある。市当局の建設費見積は甘い。これも病院のマネージメント力が弱いことが一つの原因だといえる。ローコストの病院建築を徹底的に学ぶ必要がある。

 

病院関係者と行政関係者、私たち市議会は、病院経営について真剣に学ばなければならないことを、伊関先生は鋭く、しかも具体的に指摘してくださいました。考えられる要素のすべてをあらゆる角度から切り込んだ、とても示唆に富んだ研修となりました。これを活かさなければ意味のないことも、報告書を作成しながら頭に刻み込んでいるところです。