視察研修報告の3件目は、岡山県高梁市における「JR備中高梁駅舎及び図書館を核とした複合施設」です。
高梁市は、岡山県倉敷市の北の中山間地域にあり、平成16年に1市4町が合併し、新しい高梁市として誕生し、人口32,000人足らず、面積500k㎡ほどとなっている。合併により市内に5校の高等学校を有することとなったことに加え、吉備国際大学、高等看護福祉専門学校等があり、人口の1割に相当する3,200人程の学生が学ぶ「教育のまち」となった。
高梁市のJR備中高梁駅は、人口の半数近くが住む中心市街地にあり、通勤・通学等で4,000人/日近い乗降者が利用している、市の玄関口だ。
備中高梁駅周辺整備事業は、平成12年の「交通バリアフリー法」制定をきっかけに、駅東西の連絡道を整備することによる再開発をすることから始まる。平成24年「高梁市都市ビジョン」を策定し、市とJR間で基本協定が締結されたことで、工事が着工されることとなった。平成27年に完成し、新備中高梁駅橋上駅の供用開始となっている。
備中高梁駅周辺整備事業の総事業費は、平成16年に開通した東西連絡道建設工事に約5億円、駅橋上駅舎の整備及び東西連絡道付帯施設工事に11億円を要している。〔11億円の財源内訳━国費(まちづくり交付金):4.4億円、起債(合併特例債):4.9億円、その他(JR負担金):1.4億円、一般財源:0.3億円〕
JR備中高梁駅に隣接する図書館を核とした複合施設は、平成28年12月に完成しており、核となる高梁市図書館は平成29年2月4日(土)に開館した。延べ床面積:3,882㎡(図書館部分:2,251㎡)、蔵書数:12万冊、建設費:約20億円。
公設民営により民間活力の導入をして、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(株)=CCC とのパートナーシップで、市民がより利用しやすく、人が集い、学びを得られることを目指している。委託料は1億6千万円/年で、運営におけるコンセプトは「未来につなぐ図書館」で、市民の要望や願いが形になっている。 ●年中無休で365日開いている図書館で、開館時間は朝9時~夜9時まで。 ●こども図書館を独立させ、子どもづれでも気兼ねなくすごせるフロアを設置。 ●市民の要望の多かった学習室を設置。 ●スターバックスコーヒーが入っており、本を読みながら楽しめる。 ●蔦屋書店を併設。 ●図書返却場所を5か所から19か所に増加。
会館初日には4,000人が訪れ、その後の平均来館者数は2,000人を数え、昨年一年間の来館者数をわずか数日で上回るほどの反響がある。
高梁市は、日本の地方における若者にとって、魅力あるまちづくりとは何かを示しています。その出発点は、ここに住む人が自らのまちの本質と特性に気付き、このまちだからこそできることは何かを、見つめ続けることから始まっています。伏線の伯備線JRで、岡山まで30分の位置にある学生の集う備中高梁駅。若者が自然と集う場となる駅周辺。「天空の山城」備中松山城を原点とする城下町の歴史と伝統、文化。どれをとっても誰もが気付かなくてはならない、当たり前のことこそがこのまちの最大の魅力なのだと気付いたのです。それを頼りに、がむしゃらに実践したのでした。ここまで来るには様々な困難があったと推察されますが、柔軟な発想と揺るがない信念で推進してきた関係者に敬意を払いたいと、心から思っています。小手先ではない、このまちに本当にふさわしい計画とは何かを考える、貴重な研修となりました。
以上で3回にわたっての報告を終わります。