4回目の会派研修報告は、「日本自治創造学会 研究大会」 の2日目に行われた分科会です。
3分科会が設けられていて、私は 『政策立案と開かれた議会づくり』 に登録し研修を行いました。
東京大学教授の金井利之氏をコーディネーターとして、三重県議会議長の三谷哲夫氏と全国市議会議長会法制参事の廣瀬和彦氏から、事例報告がありました。
三谷氏からは、 「三重県議会における議会改革」 と題して、5つの点からの取り組みについてお話をいただきました。
1. 開かれた議会運営の実現
(1) 住民にわかりやすい議会運営の推進
すべての会議を公開する。議長・副議長の選出は5名の推薦による立候補制で、公開され選挙で行われる。(任期は議長2年、副議長1年)
(2) 住民が参加しやすい議会運営の推進
傍聴は制約はない。会期の制約はなく年間230日以上の会期日数となっている。参考人招致が行われ活発である。委員会資料を事前に公開している。
2. 住民本位の政策決定と政策監視・評価の推進
(1) 議決機関としての政策決定の推進
(2) 住民代表としての政策の監視・評価の推進
3. 独自の政策提言と政策立案の強化
<平成18年に議会基本条例を制定>
(1) 付属機関の設置
議会改革委員会を条例で定める。
(2) 調査機関の設置
専門家を加えた財政問題調査会。
(3) 検討会
議員が中心でおこなう条例検証検討委員会。
(4) 政策討論会議
執行部案と議会案による討論会議。
4. 分権時代を切り開く交流・連携の推進
(1) 他府県との連携
(2) 市町との連携
5. 事務局による議会サポート体制の充実
(1) 専門的人材の充実と活用など
法制専門担当としてインターン生の活用を考える。
政治家に対する信用の収縮への対策として、議会基本条例がある。
二元代表制の一方としての議会の役割と機能を発揮するために、議会基本条例を制定するなどして、議会が一枚岩となって、監視と決定力を確かなものとしなくてはならない。
続いて、廣瀬氏からは 「地方議会が取り組む様々な改革とその意義 “議会自身の議会改革” 」 と題して、議会改革を進める中での、議会基本条例の意味するところの説明が、4点の切り口からされました。
議会基本条例は、議会と市民との意識の乖離を埋めるものとしてあるが、必ずしもそれが無ければ改革できないというものではなく、議会改革を推進するための一つの手段である。
たとえば、未制定だが議会の主体性で改革が進められる、取手市議会の事例があることをお伝えしておく。
議会基本条例に記される主な点について述べる。
1. 反問権
執行部が議員に対し質問する反問権または質問権は、法律上規定がない。
そもそも質問権は、議会の執行機関に対する監視権に由来するもので、議会は執行権を与えられていないので、執行側からの反問権は成り立たない。
一方、反問権の必要性も、議会改革のいくつかの視点からいわれている。
2. 議会報告会
議会としての広報広聴活動が必要である。
首長が広報広聴活動を積極的に行っている状況に対して、議会の活動は不足している。
3. 決算審議の活用
事業評価シートによる決算審議方法や、会派ごとに行う事業仕分けの方法がある。
4. 定数について
法廷上限撤廃の方向にある。
定数を考えるに当たっての要件は、①議会の能率的な運営 ②多数の住民が推す優れた人材の選出 ③自治体の組織全体に相応しい規模、を考える必要がある。
また、留意点としては、①定数増減による市財政への影響 ②定数改正にかかる監視機能への影響 ③地域と住民の意見集約の可能性 の3つである。
地方議員の皆さんが、議会基本条例を制定するに当たり、少しでも参考になれば幸いだ。
“議会自身の議会改革” に向けて、議会事務局の機能強化が求められていると考えている。
最後に、金井氏の言葉を記し、4回に渡った報告のまとめとします。
「国に運営できないから地方に分権しようとするのに、それをしようとする国に分権する力がない。だから地域主権改革が必要なのだ。」
「地方分権されれば地方はいかに良くなるのかを、地方議員は語れなくてはならない。首長を目指す気概を持って勉強する地方議員であって欲しい。なぜなら、地方議員は地域全体の責任を負っているのだから。」
平成22年5月17日(月)・18日(火)の2日間の 「第1回 2010年度 日本自治創造学会 研究大会 “日本の再生・地方自治の創造~地方からの挑戦~”」 の報告を終わります。
次回の会派研修報告は、3日目の19日(水)におこなったバイオマスタウンについての研修報告をします。