高校生のための金曜特別講座

インターネット回線を使用して、東京大学から全国の高校に講義を配信する 「高校生のための金曜特別講座」 が、 今回の4月30日(金)は、香川県立観音寺第一高等学校を講座会場として行われ、厚かましくも受講してきました。
この高校に通う息子が、参加者募集のチラシを持ち帰っていました。
本来は、高校生を対象に行われているのですが、一般の人も特別に受講できるようで、私も講義内容にそそられて、是非とも講義を聴きたいと思ったのでした。
通常は、東大の駒場キャンパスから講義を全国に配信しているのですが、今回は全国で初めて講義場所を東大から飛び出して、この高校で行われる講義を全国の高校に提供するというものです。
“君たちは空海を知っているか?”
と題して、2007年退官後、故郷の香川に帰り晴耕雨読の生活を過ごしている、東京大学大学院総合文化研究科名誉教授 竹内信夫先生の講義でした。
私が、ついつい興味をそそられた “「高校生のための金曜特別講座」 の案内” に記された 「講義要旨」 は、次のようなものでした。
『空海は弘法大師とも呼ばれる。彼ほど有名で、しかも虚実に覆われた歴史上の人物はいない。空海に比べれば、坂本龍馬も脱帽するほどに、虚実の差は大きい。なぜだろう? 歴史が、ある意味では時間のほこりみたいに、彼の上に積み重なっているからだ。空海の上に積もった歴史の時間は厚い(約1200年程ある)。空海も息苦しいに違いない。その重圧から空海を解放できないだろうか? 「歴史」 と 「物語」 の不思議な関係、いずれ劣らぬ虚実の闘いについて話してみたい。』
1200年前に、生身の人として生きた空海という人物と、1200年の歴史に生きた弘法大師と呼ばれる歴史上の人物を、彼(空海)の書き残した書物を読み解くことのよって明らかにしようとするものでした。
現代も生きている空海思想のポイントとエッセンスはなにか?
(1) 生命世界の完全な平等性、相互依存性を主張する 「四恩」 思想。
「四恩」 とは、空飛ぶ鳥・地をはう虫・水中の生き物・林の獣たちであり、私の命はこれらによって支えられている。生命共同体としての生命への配慮である。
(2) 差異を超えてあらゆる存在と思想が尊重される 「マンダラ」 的世界観。
一定の秩序や区別はあるだろうが、差別はない。誰もが平等だと言うこと。
1200年も以前から、現代の世界的課題に言及する 「自然環境」 や 「人権」 に信条は巡らされていたのです。
であるが故に、1200年の歴史という時間のほこりが、空海の意の及ばない程に積もったのでしょう。