民生常任委員会の行政視察研修報告の2件目は、愛知県豊田市立の「寺部こども園について」です。
豊田市はトヨタ自動車の本社があり、市内の製造業で働く人の約85%が自動車関連産業に従事しているという「クルマのまち」である。一方、市町村合併により、愛知県全体の17.8%を占める広大な面積と持ち、7割が田園と森林地帯である等、豊かな自然環境に恵まれた人口425,000人程の、日本を代表する地方都市だ。
研修先である「寺部こども園」は、本年(平成28年)4月に『豊田市立寺部小学校・寺部こども園』として、豊田市初の小学校とこども園の合築で移転改築された、まだ半年に満たない最新の施設の中にある。
豊田市の「こども園」事業は、国の定める「認定こども園」とはことなり、市独自の幼保一元化の制度として平成20年度から実施されている。現在、「こども園」としての一体的な運用対象は、認可保育所(市立:55、私立:15)と、認可幼稚園(市立:12)の82ヶ所体制となっている。
幼保一元化の「こども園」に至るまでの取り組みは、次のようになっている。
<平成13年> ●保育園と幼稚園を所管する部署を統一し、市長部局に「子ども課」を創設 ●市立幼稚園で保育要件を必要とする3歳児保育を開始 以降拡大する ●市立幼稚園で預かり保育を開始
<平成15年> ●「保育士」「幼稚園教諭」を総称して「保育師」とする
<平成17年> ●「とよた子どもスマイルプラン「豊田市次世代育成支援行動計画」を策定し、「幼保一体化の推進」を計画の重点事業として位置づけた ●組織改編により、子ども課は「子ども部」となり子育て支援施策を充実する
<平成19年> ●9月議会に施設名称の変更、保育料の統一に関係する条例の一部改正議案を上程し、可決される
<平成20年> ●保育園保育料と公立幼稚園授業料を統一 ●保育園及公立幼稚園の職員配置基準を統一 ●保育園と公立幼稚園の名称を「こども園」に統一
次に、市私立保育園と市立幼稚園の一体化施策については以下の通りだ。
(1)保育園における私的契約児の受け入れ 保育園で4・5歳児の保育に欠けない児童の受け入れを行っている。
(2)市立の幼稚園・保育所の人事交流と職名統一 幼稚園・保育園間の配置転換を始め、研修の合同実施を行っている。また、幼稚園「教諭」と保育園「保育士」の職名を、豊田市方式として「保育師」に統一した。
(3)保育カリキュラムの統一 0~5歳児までの保育期間全体にわたる計画として「豊田市保育課程・指導計画」を策定し、市立幼稚園と市立保育園及び私立保育園において本計画に従った保育が実施されている。
(4)所管部所の統一と施設名称の「こども園」統一 「子ども部」は、次世代教育課、子ども家庭課、保育課の3課となり、保育課が幼稚園と保育園を所管し、「幼稚園」「保育園」から「こども園」に施設名称を変更した。
(5)職員の配置基準を統一 幼稚園と保育園とで異なる職員配置基準を、保育の質の充実と受け入れ児童数の確保の双方の視点から、統一した。〔0歳児:3人、1歳児:5人、2歳児:5人、3歳児:15人、4歳児:28人、5歳児:30人〕
「寺部こども園」のある『豊田市立寺部小学校・寺部こども園』は、寺部こども園と寺部小学校が合築されている。その最大の成果は、豊田市が平成20年から取り組んできた「こども園」と小学校がつながることにより、幼保小の連携がハード面においても実現したということだ。
その概要は、児童数:380人、園児数:180人(0歳児:8人、2歳児:20人、3歳児:45人、4歳児:65人、5歳児:40人)となっており、施設内容はパンフレットの通り。
2階の『交流室2』は、小学校とこども園の連携を代表する取り組みが行われるスペースだ。ここには絵本があり、小学校の図書委員の有志が、子ども園児へ絵本の読み聞かせをするなどしている。また、地域ぐるみの教育の推進のための『地域支援室』を拠点として、地域との交流が活発に行われるよう計画されている。
こども園と小学校のソフト面・ハード面による連携は、豊田市の幼保小の一貫教育の理想形が出来上がったのだと思います。こども園と小学校が合築された最新機能施設は、こども園が子どもたちの就学に向けての助走期間ともいえる大切な時期を担うことができると確信しました。小1プロブレムの解消に少なからず貢献し、子どもたちの健やかな成長につながっていくことにまちがいありません。市私立保育園と市立幼稚園を「こども園」と打ち出すことで、保育園児も幼稚園児も同じ豊田の子どもだという、当たり前のこと前提に取り組まれているのが、この事業の政策の肝なのです。シンプルであり、かつ、洞察のある豊田市の「こども園」事業であると納得しました。一筋の道が鮮明に見えた研修でした。