総務教育常任委員会行政視察研修の3件目の報告は、8月20日(木)午後に訪問した長野県上田市における、「若者サポートステーションについて」と「幼保小中連携の取り組みについて」です。
上田市は、平成18年3月6日に上田市、丸子町、真田町、武石村の4市町村による新設合併で誕生した。人口16万人、面積552.04㎢で、県内では3番目の規模を持つ、県東部の中核都市だ。戦国時代に活躍した真田氏の発祥の地であることで有名だ。また、多くの文化遺産が残されており、「信州の鎌倉」の異称で呼ばれている。現在は、製品出荷額で安曇野市に次いで県内2位である。
「若者サポートステーションについて」は、事業の受託団体である認定NPO法人侍学園が運営する『若者サポートステーション・シナノ』から説明があった。
15~39歳を若者というが、その内不登校13万人、パラサイトシングル1,200万人いるといわれている。また、近年若者の非社会的傾向が強くなっており、教育、職業、職業訓練のいずれにも参加していない15~34歳のニートは84万人いるとされ、引きこもりは70万人、予備軍は155万人いるとの内閣府の発表もある。
例えば、引きこもり100万人いるとし、本来就労しているはずの30代が3割で30万人とする。30万人に1か月5万円の投資をすると150億円となり、1年間に換算すると1,800億円もの社会投資が必要となる。この若者たちを立ち直らせて就労に導くのが『地域若者サポートステーション・シナノ』の役割だ。
サポートステーション(サポステ)は、厚生労働省が認定したNPO法人や株式会社等が運営しており、全国に160か所設置されている。長野県には、3か所ある。
現在、サポステ・シナノが取り組んでいる中間就労事業に、【サムライバリュー】がある。仕事場は、若者の自尊心を傷つけないために、カフェのような就労体験環境にしている中古書籍とコーヒーの店『ことば屋』だ。これが、、アマゾンの中古書籍物流事業者である「バリューブックス」と侍学園が連携した中間就労事業となっている。中古書籍の検品・クリーニングを行いPC入力してアマゾンへ出品するとともに、商品を『ことば屋』の店頭に陳列し、アマゾンから入った注文を受注し本を探し出し梱包・発送する。
安心できる環境であるならば働けるし仕事はできる。そんな若者に働く機会をつくっている。このような地道な活動によって、サポステ・シナノは年間100人の若者の就労に結び付けている。
働けない若者を、社会に適応させようとするべきなのでしょうか?それとも、彼らが働きたいと思う社会に変わらなければならないのでしょうか?断崖と絶壁に立つ思いがしています。
「幼保小中連携の取り組みについて」は、上田市では、子どもたちの育つ環境の激変や育てる親自身の未熟さによる育児不安、また、年間に出生する子どもたちのうち1割が発達障害の疑いがあるとの現状の中、教育委員会と健康こども未来部(保育課、子育て・子育ち支援課)が連携を図り、幼児期から義務教育期までの子どもの視点に立った一貫した育成に取り組んでいる。幼保小中の連携を推進し、家庭や地域、学校が共通した認識で子どもたちの成長を支えていくことが重要であることから、幼保から小、小から中へのスムーズな移行を図るため「ブロック会議」を設置し、情報交換や交流をおこなっている。
上田市の掲げる保育目標「心豊かな子ども」と、教育委員会目標「次代を担う人づくり」を実現するために、幼保小中の連携によるギャップを少なくした接続をいかに行うかが主要課題であり、幼児教育と小学校教育といった、立場によって子どもの見え方が違うことを前提として、取り組むこととしている。
特に、幼保小連携事業は、「接続期が子どもにとって安心した学びの場であるためのものであり、決して就学のための教育準備期間であってはならない。」として、子どもたちにとって毎日の全てが一所懸命の本番であり、練習では決してないということを基本にしている。
園の生活における子どもの特性を知る保育士は、子どもの情報や支援方法を学校へ伝えることで、子どもが安心して小学校生活をスタートすることができるようにし、学校職員は子どもの持っている力を発揮させる教育活動を計画実践する。また、各施設を訪問しあい職員間の交流を行う中で、幼保小の生活リズムや運営目標の違いをよく知り違いを知ったうえで、それぞれの生活や教育環境を見直す。これらの取り組みから、一例として、不登校になりそうな子が、保育士と接することで立ち直ったという成果があった。
校長・園長合同会議は、それぞれの立場から見た「幼保小中連携の必要性について」理解を深める役割を担っている。また、中学校区ごとの幼保小中で構成する「ブロック会議」は、子どもの記録を引き継いでいくことができ、子どもの連続した成長につないでいくことができる。
上田市の健康・福祉と教育関係部局の連携によって、「上田市未来っ子かがやきプラン」が結実している。
幼保小中の一貫した子育てと教育で最も求められるものは、子どもの成長を幼保小中の先生たちや地域の大人が、途切れることなく見つめていける環境づくりなのだと、再確認することとなりました。
以上で、上田市における研修報告を終わります。