三豊市議会の第1会派である 啓明会 の視察研修に平成27年1月20日(火)~22日(木)の3日間参加しました。訪問先は、中国山地の山間部にあり、それぞれの地域の特性を生かしたまちづくりに取り組んでいる、3つの自治体です。
一件目の研修は西粟倉村(にしあわくらそん)で、岡山県の北東部に位置し、北は鳥取県に、東は兵庫県に接した、人口1,500人ほどの林業の村です。三セクの智頭急行で大阪へ2時間、東京も日帰り出張が可能なため、都市との交流ができるところにあります。面積は57.93㎢で、内95%を森林が占めています。その内85%が人工林です。これを地域唯一の資源ととらえ 【百年の森林(もり)構想】 を掲げ、森林から始まる村づくりの 【百年の森林事業】 の挑戦が続いています。このことが結果として、若者の定住に成果を上げているのようです。
【百年の森林構想】 とは、「約50年生にまで育った森林の管理をここで諦めず、村ぐるみであと50年がんばろう。そして美しい百年の森林に囲まれた上質な田舎を実現していこう」 「森林事業は心と心をつなぎ価値を生み出していく『心産業』、村の資源である森林から産業を、そして仕事を生み出していこう。」 というものだ。
2009年に、私有林を対象とした西粟倉村森林管理運営に関する基本合意書の締結が行われ、村(役場)が森林を守る 【百年の森林事業】 がスタートした。【百年の森林事業】 には、<百年の森林創造事業> と <森の学校事業> がある。
<百年の森林創造事業>(川上の事業) とは、西粟倉村の森林総面積5,400㏊の内個人所有の私有林約3,000㏊を管理し、生物が豊かで、美しく安全な森林づくりが目的だ。そのための基本的方策として、①集約化による森林整備(面積の小さい森林を大きなまとまりにし、効率化する) ②長期施業管理に関する契約(森林を預かって管理・整備) ③百面の森林総合情報システムネットワークの構築(所有者ごとの境界が明確となっている) を整えた。これまでの取り組みの結果、村管理の森林管理面積は約2,350㏊と拡大してきた。間伐材の収益の分配は、平成25年度で平均販売単価9,100円/㎥となり、所有者分配金は2,800円/㎥であった。木材価格が上昇したため、収益は大幅に増加した。また、都市との交通の便が良いこともあり、民間事業者の運営する『共有の森ファンド』への投資も集まり、森林所有者に対する現地説明会『新しい森づくり発見ツアー』(役場・森林組合・森の学校共催)を開催し、村の認知度向上に努めている。その他、村内でも大型木製遊具を制作し、子どもたちが西粟倉産材に触れる機会をつくったり、誕生祝品「ウッドスタート」として地産地消の木製玩具のプレゼントや、子どもが気に触れながら育つ環境をつくるため、木育拠点整備を実施している。
<森の学校事業>(川下の事業) は、間伐材を使った商品の開発・販売(消費者に直結)を通して、西粟倉のファンをつくることが目的だ。(株)西粟倉・森の学校は、旧影石小学校跡地(昭和34年築)を利用し、平成21年10月に設立された。ここを拠点に <百年の森林創造事業> により育まれた森林をきっかけに、西粟倉を多面的に活性化し、森林を人々の暮らしに繋げていく事業だ。西粟倉産材の製材所が平成22年8月に稼働したことで、FSKに認証を受けた森林材によるオリジナル商品や新たな取り組みの可能性が広がった。西粟倉産材を使用しCO₂削減に貢献するための、東京都港区との ”みなと森と水二酸化炭素固定認証制度” の協定を締結し、自然環境を守る村として知られるようになった。また、林野庁と環境省の委託事業である「木質バイオマスエネルギーを活用したモデル地域づくり累進事業」 により、中山間地での木質バイオマスのモデルケース作りにも取り組んでいる。
このような事業展開の結果、西粟倉の生き方に共感する若者が訪れるようになった。学生のインターンシップや体験ツアー等を通して、若者の応援が集まることで、森の学校を拠点とした雇用の場が生まれ、新規事業による活性化で50人の若者が定住した。始めから若者定住を目指したわけではない。この村には森林があった。唯一の資源に全てを託し村挙げて集中することを決断したのが 【百年の森林構想】 であり 【百年の森林事業】 だったのだ。いまだに手さぐりでの取り組みだが、ここにはこれしかない。
今後、地域の課題解決の視点として、独居老人の増加に対し、再生可能エネルギーを活用した低コスト生活による 「上質な田舎」 の創造を実現していこうと考えている。単なる化石燃料の再生エネルギー化では行き詰まる可能性が高い。森林をきっかけにした木質バイオマスによる、再生エネルギーの活用が西粟倉村を支えていってくれると思っている。
地域自らの決断が地域自身を変え、地域活性の再生エネルギーとなることを学んだ研修でした。説明をしてくださった、産業観光課 百年の森林構想推進係 小椋課長補佐、総務企画課 粟屋課長補佐には、お忙しい中お世話になりました。ありがとうございました。
※FSK=ドイツに本部を置く国際組織「森林管理協議会」