教育民生常任委員会の視察研修最終日の7月2日(木)は、岐阜県各務原市(かかみがはらし)の、斬新なデザインで話題の火葬場、“瞑想の森 市営斎場” を訪問しました。
各務原市は、昭和40年に大規模住宅団地が造成され、名古屋地域のベッドタウンとして人口が急増してきました。
市の中央部に航空自衛隊岐阜基地があり、航空機、自動車などの輸送用機械関連産業を中心に製造業が発展し、平成16年に近隣町と合併することで、現在人口150,000人を超えるまちとなっています。
“瞑想の森 市営斎場” は、旧火葬場の炉の老朽化で、10年に及ぶ補修しながらの使用が続けられる中、平成15年度新火葬場建設の基本構想の作成業務が始められました。
総事業費 13億円を費やし、平成16年度 仮設道路、造成、建物設計、そして平成17・18年度 建物工事と進められ、平成18年6月に竣工しています。
人体炉5基、動物炉1期を備え、友引と元旦を休業日として、人体は1日最大10体、年間1,150件ほどに対処しています。
建設にあたり、市の方針として、市民生活として必要不可欠な施設であるにもかかわらず、一般的に迷惑施設といわれるゴミ焼却施設同様に、火葬場といえども他のどこにもない市民に身近に感じてもらえる、独創性のある施設にしたいとの考えがありました。
環境デザイン全体をプランナーに依頼し、隣接する市営墓地と一体とする 「静けさと自然に帰る」 を基本理念とした公園墓地 “瞑想の森” とすることとしました。
その中心施設として火葬場が位置づけられ、このコンセプトをデザインという形にしたのが、2006年に王位英国建築家協会のロイヤルゴールドメダるを受賞した、伊東豊雄氏でした。
真っ白な雲をイメージしたような曲線を生かした自由曲面シェル構造となっていて、蓮の浮かぶ池から臨む光景は、周囲の樹木と調和し、まるで美術館かレストランのようです。
まさに、 “瞑想の森”であり「静けさと自然に帰る」心に潤いをよびもどす、心洗われる自然空間に他ありません。
施設内は間接照明で照らされ、ロビーは教会のようでもあり、コンサート会場としても利用されています。
財政的な問題は最重要ですが、これまでの行政の考える火葬場などは、ともすれば機能追求、コスト最優先で責任を果たしたと考えるところがあります。
経済環境が苛酷であればなおのこと、社会通念として忌み嫌われる迷惑施設(ゴミ処理施設や火葬場など)であるほどに、今生きる人にとって必要不可欠な ”よりどころ” であることを、いかに施策に反映させるのかが求められているのだといえます。
私たち自身も気づいていない隠れた欲求を、感じ取る柔軟な思考と想像力の大切さを感じた、視察研修となりました。
以上で、今回の視察研修報告を終わります。