現消費者庁次長の山崎史郎さんは、「ミスター介護保険」と言われているそうです。2000年、当時の厚生省・高齢者介護対策担当として、介護保険の制度設計をした生みの親だからです。6月8日(日)に、まんのう町の議員さんと一緒に、滋賀県大津市で開催された「チョウチョの会」に参加し、山崎さんの講演を聞くことができました。山崎さんは厚生省入省以来これまで、社会福祉分野を一貫して歩んできました。介護保険の成り立ちからこれからの課題など、ご自身の思いと考えを赤裸々に話していただきました。
「高齢者介護のこと」
高齢者医療福祉政策は、介護保険と「自立支援」の歴史だ。 〔1960年代〕高齢者福祉政策の始まり(高齢化率:5.7%) 〔1970年代〕老人医療費の増大(高齢化率:7.1%・老人医療費無料化) 〔1980年代〕社会的入院や寝たきり老人の社会問題化(高齢化率:9.1%・老人医療費の一定割額負担の導入) 〔1990年代〕ゴールドプランの推進(高齢化率:12.1%・高齢者介護と自立支援システムの研究会) 〔1995年〕介護保険制度の導入準備(高齢化率:14.6%・1997年介護保険法成立) 〔2000年代〕介護保険制度の実施(高齢化率:17.4%・介護保険施行) 〔2003~09年〕介護保険料と介護報酬改定(高齢化率:2008年22.1%) その後も介護保険料と介護報酬改定が行われた。今から振り返ると、1970年代~80年代は高齢者医療福祉の暗黒時代だった。90年代からは、それまで家族を含み資産と考える「日本型社会福祉論」がおかしい、という考えが反映され自立支援へと向かっていった。
介護保険制度導入には、日本社会に対する発想の大転換が必要だった。基本理念を ● 「日本型社会福祉論」【自助】(嫁に世話をさせる)と ●措置制度(救貧施策)の高齢者福祉【保護】(予算がなくなるとサービスもなくなる)という既存概念を、【自立支援】に転換した。また、制度・支援体制は ●利用システム(行政処分として低所得者に限定)と ●質量ともに貧弱な支援サービス(公的な事業サービスに限られ、医療と福祉でバラバラのサービス)であったものを「社会保険方式の導入」により、本人の選択・契約方式として一般国民を対象にサービス選択のサポートをするケアマネジメントを導入した。そして、サービスの一元化と民間参入によりサービス拡充・市場活用を取り入れた。
65歳以上人口はこれまでの10年で4割近く増加し、要介護認定を受けている者は2.5倍に増えている。介護費用・介護保険の推移は、2000年に3.6兆円で2012年には8.9兆円となり、2.5倍になっている。それに伴い保険料の一人当たり月額全国平均は、第1期2,911円から第5期4,972円となっており、約2割高となっている。
介護保険の最大の問題は 認知症 だ。認知症高齢者数は、現在約300万人であるところが、10年後には430万人になるといわれ、40%増えると予測される。認知症ケアの課題の本質は、「ケアマネジメント」が機能していないことで、医療・介護・家庭の連携ができていないことに原因がある。ケアプランは何のためにあるのかを、しっかり理解した人材の育成が欠かせない。
介護保険の基本理念から制度を生み、これまでの制度改定を見続けたきた、全てを知るものだかこそ言える確信の言葉に触発されました。介護保険制度を基本から学び直そうと思っています。