日本自治創造学会 研究大会の初日である5月22日講演の4件の報告は、前回で終わりました。今回からは2日目の23日講演の報告をします。
「ICTの活用による地域経済の活性化」 猿渡知之総務省地域政策課長
地域経済の現状と課題は、公的年金と国からの再配分された交付税や補助金等の財政的資金が大きく支えている現状で、今後、大都市部における高齢化率の急上昇で、地方は経済・財政の自立化の必要性が加速する。よって、地方は税収を生み出す基盤を作らなければならない。そのために、地域密着型企業の増加・生産性向上と地域全体での効率的なまちづくりが欠かせない。そのツールとしてICTがある。
自治体とICTの関係は、【自治体の経営最適化のため自治体クラウドの推進】 【経済活性化・地域経済基盤のため社会クラウドの推進】 がある。自治体情報化の流れは ①1960年代大型コンピュータ ②1970年代ホストコンピュータ ③1990年代クライアントコンピューター ④2000年代Webシステム~自治体クラウド となっている。ICTの活用で地域経済の活性化の時代だ。
(1)自治体クラウド : 所有から利用へ、共同化・集約化
(2)地域経営型包括支援クラウド : 電子自治体の基盤を活用しながら、様々な主体が活用できる支援システムを整備し、住民サービスの向上と官民通じた業務の効率化を図る
(3)公共クラウド : 地方自治体の情報システム基盤とクラウド技術を活用して、システムの統合化・集約化を図り、行政データを公開することを通じて、民間事業者を含む様々な主体が共同で利用できる情報インフラ
(4)自治体の経営最適化 : 共通業務を標準化し共通の情報処理システムの構築と運用でコスト削減 システム管理やメンテナンスをすべて事業者委託できる きめ細やかなニーズに対応することで各自治体の裁量権が拡大 パソコンだけに限らず携帯端末の活用が見込め現場での対応枠が広がる
(5)社会クラウド : ①データの標準化検索スピードの大幅な性能向上(医療統計情報データの実証実験) ②予防医療・介護基盤(業務の簡素化と必要なデータの一覧性確保) ③金融決済基盤(地方自治体や企業が個別に持つのではなく金融機関のソリューションシステムを活用) ④教育支援コンテンツ創造システム(教育水準確保と生徒側からのオンデマンドの教材作成が可能) ⑤企業支援システム(・地域全体の企業の生産性向上・関連データの検索機能を活用し、潜在的な販売ルートの発見や地域にある原材料供給源の発見) ⑥公共施設のオープン・リノベーションを核とした地域再生事業(公共施設のオープン・リノベーションで地元に住みたくなる空間を━地元に代官山の出現:佐賀県武雄市図書館の場合、20万冊蔵書×雑誌が買える図書館×映画音楽×文具×検索ITソリューション×カフェダイニング×ノウハウ×Tカード×開館時間の掛け算)
ICTは道具だ。地域で生き続けることができる経済基盤強化に活用してほしい。
5件目の講演の報告を終わります。