視察研修報告の2件目は、 〔自治体総合フェア 2014〕 の自治体トピックセミナー:地域包括ケアシステムセミナーの2件目です。
【講演Ⅱ】 「横須賀市における在宅療養連携の取り組み~最期まで住み慣れた場所で~」 横須賀市健康部地域医療推進課 課長補佐 川名理惠子氏
横須賀市は、面積100㎢ 人口約41万人の中核都市です。高齢化率約27%で年間死亡者数約4,500人で、人口ピラミッドからの予測で、10年後には5,300人程に増加するとされています。平成25年に実施した、介護認定を受けていない65歳以上の市民1,000人余を対象としたアンケートでは、60%が自宅での療養を望んでいる結果となっていますが、現状は死亡場所が自宅であるのが20%となっています。また、これまでの10年間の死亡場所別死亡数の推移では、病院での看取りは増えていないのに対し、自宅は1.8倍に増加しています。
これらのことから、●在宅での療養や看取りを希望する市民は多い ●在宅での看取りが増加すると予想される ●在宅での看取れる体制を作らなければならない の課題が見えてきたのです。その目指す方向は、「住み慣れた我が家で療養したいという方が、在宅での療養・さらには看取りという選択ができるように地域医療の体制づくりを進める」ことでした。「私たちは、病院に任せることに慣らされてしまっている。市民がやれるシステムをつくっていこう。」と決め、平成23年度から在宅医療の体制づくりに着手してきました。
これまでの取り組みは、準備段階の平成22年度に、医療・福祉関係者へのヒアリングを行い、在宅での療養生活ができるための、連携による緩和ケア体制を促進するための基本計画を策定しました。スタートの年である平成23年度は、医療・福祉の多職種が同じテーブルについて話し合うことで、「みんな、誰もが利用者のために何とかしたいと思っている」ことを知りあうことができました。このことで相互の理解を深めることができ、在宅療養連携会議が発足したのです。平成24年度は、在宅療養連携会議のメンバーが増え、ワーキングチームを設置しました。また、幸運にも厚生労働省の在宅医療連携拠点が、市内で2か所採択されたのです。平成25年度は、市内を4ブロックに分け在宅医療ブロック会議を設置し、4つの中核病院をブロック拠点として、在宅医の増加と協力体制を構築していきました。さらに、医師会に在宅療養センター連携拠点を設置し、ブロック拠点の情報交換の開催によって、多職種連携を図っています。
ブロック会議の目的は、「横須賀の在宅医が一人でも増えるように、地域内で診療所のネットワークづくりを進める」ことです。目指すのは、市民・在宅医・病院・多職種の関係者みんながWⅰn-Wⅰnになれるネットワークづくりです。
今後の課題として、平成27年度以降に地域支援事業が市に下りてくるといわれていますが、国の制度や組立が明確でないため、財源の継続に不安があることです。このような状況にあっても、横須賀市の地域特性を理解し お・も・て・な・し (お:想いを伝える も:目標を共有する て:できることから始める な:何も正解はないと知る し:市はコーディネーター)の心で、このまちに相応しい地域包括ケアシステムの構築を進めていきます。
川名さんは、地域包括ケア担当になる前は、図書館勤務でした。介護のかの字も知らないずぶの素人でした。それがこんなに素晴らしい事業を創り上げてきたのです。真っ白なところからの真っ直ぐな取り組みがみんなの心をつなぎ、実を結んだにちがいありません。三豊市でも必ずできると確信しました。