総務常任委員会行政視察研修 報告Ⅲ

3か所目の訪問先である富山県南砺市では、「移住・定住の取り組み」について南砺で暮らしません課 他から説明をいただきました。

 

南砺市は、人口46,000人余(うち外国人1,000人余)、面積668.64㎢、富山県の南西部に位置している。4つの町と4つの村が合併し誕生し、令和6年11月1日に20周年を迎える。

 

「南砺市の移住・定住施策について」 南砺で暮らしません課

南砺市の移住ガイド『なななんと』の冒頭のコピーは次のように語りかけている。「特色のあふれるそれぞれの地域には、美しい四季の中で受け継がれてきた古き良き伝統が息づいています。豊かな自然に囲まれた里山での暮らし、歴史や文化がぎゅっと詰まった情緒あるまちなかでの生活、その両方が存在しており、自分に合ったライフスタイルがきっと見つかります。あなたが思い描く理想の暮らしを南砺市で実現してみませんか。」

南砺市は「田舎暮らしの本」宝島社の2024年2月号で、「住みたい田舎」ベストランキングの北陸エリヤにおいて、総合部門で2位となった。南砺市の良さを感じ移住する人が増えている。暮らしやすさと県内トップレベルの充実した移住支援策で、UIJ ターンを支えている。

南砺市が評価されているポイントは ①世界遺産など伝統や文化の宝庫 ②就業、通勤、企業のどれもが良い環境 ③移住を希望する方への支援制度が充実 ④移住定住希望者へのトータルサポート

移住希望者に対し、移住や定住に向けた国や県、市の施策をパッケージ化し、手続きや情報提供をワンストップサービスでサポートすることで、移住への支障を解消している。また、潜在的な都市部の移住希望者へ様々なチャンネルを通して移住情報を伝え、その人の移住希望の実現を支援している。

その仕組みは、【知る・伝える】*情報発信事業 ⇒【体験する・受入れる】*移住準備事業 ⇒【移住・定住へ】*定住サポート をワンストップで提供しており、住まいの補助金として『住みたい南砺応援金』や『定住奨励金』の制度を充実している。

 

「関係人口に着目した南砺市応援市民制度について」 政策推進課

南砺市には「応援市民登録制度」がある。南砺市の考える応援市民(関係人口)の姿は、短期・中期に市民とともに地域を守り、盛り上げていくパートナーとして、長期としては「できれば南砺市に住んでもらいたい」。移住は無理でも継続的な関係を深めていくことだ。

「南砺市の人口ビジョン」を策定している。社人研推計では2060年23,000人弱と予測されているところを30,000人の目標とした。そのために応援市民の目標を5,000人とした。平成28年10月から登録開始し、令和6年3月末現在の登録者数は1,149名の実績となっている。

課題と近年の取り組みについて、そもそも南砺市応援市民の認知度が低いとか、応援活動への参加者が少ないとかの課題があり、その対策として金沢大学と連携し、「学生サポーター」を募集した。現在は、学生が南砺市内で様々な活動を展開している。

「学生サポーター」活動による効果は、若者が活躍することで南砺市でなら何かできそうな雰囲気が生まれ、出ていった若者も南砺市が気になり、戻ってみようかなという機運の醸成へとつながっていく。「若者に寛容なまち」「若者から選ばれるまち」を目指し、新しいことへのチャレンジを応援する。「寛容性」にあふれた地域社会を構築し、人口ビジョンの達成とまちの将来像の実現を目指す。

学生の参加と新たなアイデアで地域に変化を!を実現しようとしている。

 

「市内企業の人材不足解消に向けた取り組みについて」 商工企業立地課

「若者の希望にあう就業への支援」を推進していくため、若者が地域に定着できる「仕事づくり」を戦略的に取り組む。南砺市の「課題」や「特性」を整理した上で、まちづくりと一体となった若者定住に向けた企業立地施策等を定める「企業立地戦略」を策定した。計画期間の設定を、令和4年度~11年度とし、第1段階を4年度~8年度、第2段階を9年度~11年度とした。

策定委員会では、 ①市内企業の市外流出による就業機会の減少 ②市内企業が十分に知られていない ③若者、女性の希望に沿う就業機会が乏しい の3つの課題に整理したうえで、3つの基本方針を定めた。 基本方針1:市内企業の定着及び成長促進  基本方針2:雇用確保に向けた市内企業の魅力発信強化   基本方針3:市の特性を踏まえた企業誘致 とした。次に、市の強みと弱みを拾い出し、現状を整理することで市の特性を示した。それらを分析しながらそれぞれの基本方針について事業プランを立てていった。

プラン立案には3つの基本方針のそれぞれの背景の見極めが重用だ。 基本方針1:●特に若い女性の人口流出に歯止めがかからない ●市内に一人暮らし向けの賃貸住宅が少ない  基本方針2:●市内企業の魅力が知られていない ●大学進学で地域とのつながりが希薄になる  基本方針3:●子育て世代を含めた女性の就業機会が少ない ●転出した若者を就職等で呼び戻すことが必要 ●市外からの企業誘致の実績が少ない  これらの背景を踏まえた事業プランの事業が創設され、まさに展開中である。

今後の推進体制については、事業プランの取り組み状況の評価、検証を行い、社会情勢の変化を踏まえ、適宜見直しを行う。(産業振興会議等に専門家を加えることを想定)

 

私が、興味を持つと併せてぜひ三豊市(行政がやるかどうかは別として)でも取り組む必要性を強く感じたのは、基本方針2の事業の一つである「若者と企業のつながり支援の中のインターンシップ開催事業」です。高・大生が地域の事業者がどんな思いで企業経営を行っているのかを、知る機会がこれまで皆無であったのです。企業は人手不足であえいでいるにもかかわらず、地元の若者は働く場がないから外へ出ていくという、ミスマッチが生まれていたのです。その原因は、若者が生まれ育った地元企業の本質を知る機会がなかったからです。重要なのは、お互いを知る方法を誰が展開するのかということです。若者たちにとって地元企業が働く場だと気づけば、それは地域の魅力であり、強み・資源になり輝きを発するのだと確信した研修でした。

 

以上で、3回に渡る総務常任委員会行政視察研修の報告を終わります。

 

 

総務常任委員会行政視察研修 報告Ⅱ

2か所目の訪問先である新潟県上越市では、「上越市の防災の取り組み」について、危機管理課他から説明をいただきました。

 

「『令和6年能登半島地震』における上越市の対応状況等について」

今回の能登半島地震は、日本海調査検討会(2014)による波源断層モデルにおける能登地域のF43が動いた。当市には30分位で津波が来ると予測されていたため、速やかにその対応を行った。午後4:35頃に第1波が関川を遡上。市内で確認した河川の津波遡上は、関川から約5㎞、関川の支流の保倉川で約1.6㎞まで確認された。関川河口における津波の高さは3.2mで、遡上高は船見公園の5.8mが記録された。

津波ハザードマップでは、避難支持の発令は津波発生時は市が避難指示を発令する時間的猶予がないため、『大津波警報・津波警報・津波注意報』をもって、市からの避難指示の発令としている。

市の情報発信は、防災行政無線や防災ラジオ、安全メール、市公式SNS、市HP及び報道機関を通じた周知など、様々な手段を用いている。今回の興味深い発信の手法として、発災日である1日には3回防災行政無線によって、市職員の肉声で津波からの避難と火災防止を周知した。人の声での発信は効果的であった。

津波からの避難の基本的な考え方として 【浸水想定区域内:直ちに指定緊急避難場所などの高台へ避難】 【浸水想定区域外:安全な建物の中にいれば、原則、避難しなくてよい 自力での避難が難しい人については、屋外に出ることで余震や交通事故などの二次災害のリスクが高まるため、自宅等に留まることを推奨】

能登半島地震連絡調整会議における有識者からの提言として、これまで自動車での避難を否定していたが、自動車での避難方法を詳細に検討する段階にきていることに対して、市の方針は「原則、徒歩による避難」とするが、「避難行動要支援者等に限定した自動車による避難」を選択肢の一つとした。

次に、生活環境課から能登半島地震による、一般家庭から発生した災害廃棄物の処理について説明があった。災害廃棄物処理計画に基づき迅速な対応を行う必要もあり、一時的に市民から受け入れた災害廃棄物を集積する仮設置き場を、上越市クリーンセンター(市の燃やせるごみ焼却施設)敷地内に設置した。1月5日~5月2日まで開設した。この期間中は、処理手数料は減免とした。現在、災害廃棄物は、順次排出作業をおこなっている。

 

上越市では、津波被害想定区域のデータ情報の制度が格段に向上していることから、市民一人一人の生活・住環境を考慮することで、最良な避難手段を導きだそうとしています。これも、能登半島地震の経験と体感から生まれた示唆なのだと思います。この生きた学びを、三豊市の防災に活かしていかなくてはならないと再認識した研修でした。

総務常任委員会行政視察研修 報告Ⅰ

令和6年7月9日(火)~11日(木)の3日間、三豊市議会総務常任委員会の行政視察研修に参加しました。研修先は石川県金沢市と新潟県上越市、富山県南砺市の3か所です。

1か所目の訪問先である金沢市では「金沢市の防災の取り組み」について、危機管理課他から説明をいただきました。

 

「『令和6年能登半島地震』における金沢市の対応状況等について」

令和6年1月1日(日)午後4時10分、石川県能登地方(輪島東北30㎞付近)で、マグニチュード7.6規模の地震が発生した。金沢市は震度5弱であった。人的被害は負傷者9名死者なし(帰省先の能登で死者あり)、建物被害9,095件、道路被害2,653件、河川被害101件、がけ地被害184件、水道被害1,100戸、下水道被害約36㎞

災害対策本部は4時10分設置(3月31日をもって解散)し1月1日か~7日に7回開催された。避難状況は避難所124か所で、津波情報のため1日の午後9時30分時点で避難者数10,259人となった。

「能登被災地支援本部」を4日に設置。延べ3,973件を受け入れた。「能登被災者受入支援本部」を10日に設置。輪島市南志見(なじみ)地区から最大314人を受入れ。受入れ支援は金沢市社協が主催し『あつまらんけ~のと!』を開設して【カフェ】【支援物資配布】【相談窓口】を実施している。

能登半島地震関連予算として、能登地域の復興キャンペーン事業や市内経済団体等と能登の団体との連携事業支援制度創設、「銀座の金沢」展、能登工芸作家情報発信支援費、応急仮設住宅入居者に対し災害救助法の対象とならない生活家電の購入費用を助成、食事の提供のない宿泊施設の避難者に食事に使えるプリペードカードの配布、市内で避難所生活を送っている被災者に食事券を提供、「被災宅地等復旧支援事業費補助」、「被災木造住宅耐震改修等事業費補助」等を実施。復旧・復興に向けた取り組みとして、「金沢市被災地区復旧技術検討会議」「金沢市能登半島地震課題検証会議」を設置。現在も、復旧・復興のため取り組んでいる。

次に、「防災」と「景観・観光」「安全・快適」の面で効果が期待できる【無電柱化】の取り組みについて、土木局道路建設課無電柱化推進室から説明があった。

続いて、現地視察で無電柱化事業の事例として主計町(かずえまち)を視察し、備蓄品等を収納する防災倉庫のある金沢スタジアム:防災拠点広場を訪問した。

 

発災時から刻々と移り行く現実の速やかな対応の記録は、臨場感あふれるものでした。また、速やかな復興・復旧に向けた、多面的かつ多様な視点での予算措置の在り方に気付くことのできた研修でした。