視察研修の2日目は、鹿児島県南九州市役所を訪問し、観光行政について研修を行いました。
南九州市は、平成19年12月に知覧町を含む3町が合併して、人口約4万人、面積357.91㎢となり誕生した。現在人口は全国の地方都市同様、合併以来減少が続き3万人余となっている。薩摩半島の先端中央部に位置し、歴史と自然豊かな環境にあり、旧知覧町の歴史遺産や市内全域にある自然環境を生かし、観光によるまちづくりに取り組んでいる。
商工観光課の森田課長から「南九州市の観光概要」、文化財課からは「歴史遺産を活用した観光振興」、都市政策課からは「歴史と景観をいかしたまちづくり」の説明をいただいた。
【南九州市の観光概要】 昭和40年代前半に知覧武家屋敷庭園群が文献で紹介されたことに始まる。それを中心とする知覧の市街地は、昭和55年から道路や公園の整備が着手され、歴史と景観を活かした潤いのある街並み整備として、武家屋敷や平和をモチーフにした和風で落ち着いた佇まいの町づくりが進められた。町づくりが進む中、昭和62年に知覧特攻平和会館が新築され、より多くの資料展示や語り部による講和等が充実してきた。しかし、鹿児島空港からの直行バスの廃止や、新型コロナウイルスの影響もあり、近年は観光客の減少傾向が続いている。南九州市には宿泊施設が少なく日帰りが主流のため、観光消費額と滞在時間の拡大も課題である。
【知覧武家屋敷庭園群】 武家屋敷のある麓地区18.6haは、昭和56年に「重要伝統的建造物群保存地区」に選定され、7つの庭園は国の「名勝」に指定されている。その所有者等で「知覧武家屋敷庭園有限責任事業組合」を組織し、入園料の徴収やPR事業、生け垣の剪定、病害虫対策を行っている。新たな取り組みとして ●WⅰーFⅰ整備・多言語音声ガイド導入 ●周辺駐車場の無料化 ●ちらん灯採路~南九州市あかりの道標~ を展開している。
【知覧特攻平和会館】 第二次世界大戦末期に行われた特攻作戦にまつわる資料を展示し、平和の大切さや命の尊さを発信している。近年は、平和学習の場として、全国各地の学校が訪れている。
【新たな観光地づくり】 番所鼻自然公園は、伊能忠敬が「天下の絶景」と称賛したとされ、鹿児島県の事業を活用し、駐車場や園路整備して新たな観光スポットとしている。市内には、まだ埋もれた観光資源があるが、限られた予算の中で持続可能な観光地をどのように整備・維持していくかが課題だ。
【稼ぐ観光に向けた取り組み】 南九州市は日帰り観光地であるため、宿泊以外の分野で観光消費額を向上させる取り組みを進めている。 ●サイクルツーリズムの推進 ●自然を活かしたアドベンチャーパークの整備 ●体験予約サイトの運用 ●新ご当地グルメ「みなコレ名物丼」の開発 などがある。
【歴史と景観をいかしたまちづくり】 町並みの整備にあたり、歴史遺産である武家屋敷群を背景とした知覧町の街路事業では、その歴史と建造物等に十分配慮し、修景や景観の保全に努めた。昭和48年度から平成16年度の約30年をかけ、10工区の町並み整備を行った。総事業費は、75億円近くを投入した。現在、南九州市知覧町の歴史と景観を活かしたまちづくりが、観光の基盤とゆるぎない価値につながっている。
南九州市は、宿泊施設が少ないため、日帰り観光地となっていることの現実を直視し、宿泊の6,000円がないのであれば、食で3,000円+土産物で3,000円を稼げばいいと振り切っています。そこには、地元産品をフルに活用した食事メニューや土産物の開発に活路を見出そうとする明確な方針が見えます。
三豊市も同様の環境であることをしっかりと見つめ直し、宿泊施設誘致活動は引き続き進めていくことはもとより、地元産品を活用した商品開発による産業振興が、三豊市の観光振興につながっていくことを再確認できた研修でした。