総務常任委員会 行政視察研修報告(平成30年)・3

3件目の報告は、山口県周南市の「周南市の公共施設再配置について」の研修です。

 

周南市は、平成15年に徳山市、新南陽市、熊毛町、鹿野町の2市2町合併により誕生した。山口県の東南部に位置し、人口145,000人程、面積656.29㎢で、北は中国山地から南は瀬戸内海を臨んでいる。北部にかけ丘陵地が広がる農山村地帯であり、海岸線に沿って古くから大規模コンビナートがあり、国内有数の大企業の工業地帯として発展してきた。

合併により、公共施設が1,114、施設総面積849.016㎡を有することとなった。これらの中には老朽化したり設置目的が類似しているものが含まれていた。そこで、平成24年に「(仮称)周南市公共施設再配置計画(案)」を公表した。パブリックコメントを実施したところ、大半が反対意見であった。個別施設の検証結果の一覧表に、多くの市民の批判が集中していた。

原因は、●市民や議会への説明不足ー地域説明会の未実施 ●総論を浸透させる前に飛び越えて各論へ言及 ●地域への配慮不足(特に周辺地域の切り捨てと捉える市民が多かった) と考えられた。その結果、再配置計画(案)の取り下げを決定することとなった。

あらためて市民意見を反映するための策定方法として、平成25年に職員の手による「周南市公共施設白書」を作成した。総ページ489ページ、対象施設16分類、1,135施設(公園、墓地等を含む)。続いて、平成26年「周南市公共施設再配置の基本方針」を策定。平成27年に「再配置計画」の策定。現在、平成28年にこれまで担当してきた行政改革推進室から、組織改編した施設マネージメント課が引き継いでいる。

再配置にあたっての「基本方針」は、  <公共施設の保有の在り方>として ⑴市民ニーズの変化に対するサービスの提供⇒(サービスの最適化) ⑵効果的で効率的な施設の管理運営⇒(コストの最適化) ⑶次の世代に継承可能な施設保有⇒(量の最適化) ⑷安全に、安心して使用できる施設整備⇒(性能の最適化)。 また、  <地域の拠点となる施設への取り組み>は、市民生活に密着した総合支所や支所、公民館の機能やサービスは今後も維持していくことを基本とした。

「再配置計画」策定にあたっての取り組み方針は大きく2つある。 〇住民や議会との情報共有と市民参加→分かりやすくお知らせし、特に「地域別計画」は計画段階から住民と行政が一緒になってつくりあげていく。 〇統合整備等の推進→施設の複合化や多目的化を検討するとともに、廃止が決定して活用が決定されないものは、取り壊しを原則とする。また、未利用・低利用のものは貸し付けや売却を行う。

「再配置計画」を進めるにあたって、『4つのアクションプラン』を策定した。 1.「施設分類計画」施設分野ごとに施設の今後の取り扱いや方向性、整備等の優先度などを示す計画。 2.「地域別計画」分類別計画から、市として最優先に取り組むべき施設と、それが立地する地域を特定。そのうえで、いい気住民と行政が意見を交わし、今後のまちづくりも踏まえて取り組み方策を検討する。モデル事業を取り入れる。 3.「長期修繕計画」ハコモノ公共施設について、維持・補修を行い、その寿命を延ばすために策定。 4.「長寿命化計画」道路や橋、上下水道等のインフラ施設を対象に、その寿命を延ばすために策定。

「再配置計画」の周知に、マンガを活用した。平成26年な第1弾として『マンガでわかる!周南市公共施設白書』を、平成27年に第2弾として『続・マンガでわかる!周南市公共施設再配置計画』を、平成29年に第3弾「マンガでわかる!公共施設再配置の取り組み』を制作し、配布してきた。マンガの活用効果は次の通りだ。 ◎白書や計画の内容を分かりやすく伝えることができる。 ◎若い人が受け入れやすい。 ◎公共施設等の窓口で手に取ってもらいやすい。 ◎話題性がある。 ◎啓発資料として長期間活用できる。 ◎マンガのキャラクターを様々な場面で活用できる。

「再配置計画」策定後の取り組みとして、モデル事業の実施がある。市内32地域の中で地域の中心施設である支所や公民館について、老朽化している耐震性がなく建物の一部が土砂災害特別警戒区域にかかっている2地域を、モデル地域と定めた。

「地域別計画」のモデル事業の進め方は、計画の最初の段階から、地域の多くの方々に参加いただき、そこに職員の加わり、ワークショップ形式や、協議会形式による協働作業で、「地域別計画」を策定した。この「地域別計画」を基に再配置を実行に移していく。

モデル事業の一つである長穂地域の場合は、もともと地域の活動が盛んであるため、県事業の『地域の夢プラン』を策定し、自分たちの地域の方向性を自分たちで決め、発展させる方向付けを行った。

モデル事業の進め方の第1ステージで地域説明会を開催し、4項目を説明した。【公共施設再配置の目的】【モデル事業の内容】【モデル事業とした理由】【今後の進め方】であった。第2ステージで住民参加による地域別計画を策定。「ワークショップ形式」「協議会形式」など、地域住民と市職員が共に参加する協働作業により、地域の公共施設について考えていった。この話し合いの中に地元高専生に参加してもらい、出された意見や案を新しい支所・公民館のイメージを誰もが共有できるように図面に表してもらい、参加者の共通認識の定着に役立てることがでできた。

モデル事業の結果、新たな施設の <整備方法> <整備位置> <敷地の使い方> <必要な機能と大まかな間取り> を踏まえ、第3ステージの事業実施へと取り掛かることとなった。

施設分類別計画の策定は、インフラ関連施設を除き1,099施設あり、策定済み及び今後策定のもの1,001施設、策定不要98施設となっている。今後の取り組みとして、施設分類別計画から地域別計画へ、以下の項目を主眼にして進めていくこととしている。●各施設の方向性や取り組み優先度の明確化 ●市内32地域の内、モデル事業の2地域を除く30地域について、優先度の高い地域を検討する ●地域にある施設の重要度、対策の優先度、再配置を行った場合の効果を総合的に判断

終わりに、公共施設再配置の課題だが、「総論賛成、各論反対」は当たり前であり、先ずは総論(現状、今後の予測、基本的考え方等)について、ご理解をいただくよう粘り強く取り組んでいかなくてはならない。地域住民などの受益者だけではなく、市民全体の意見を反映させる研究を行い、より幅広い周知手法の研究をしていかなくてはならない。

 

今回の周南市における「再配置について」の取り組みは、市民対話を大切にした丁寧な事業展開が無ければ、決して成果に結びつけることの、ほど遠いことを学ぶことができました。三豊市が策定済みの「公共施設再配置計画」や、「公共施設等総合管理計画」など、市民にとって求められる公共施設のあり方を見つめ直さなくてはなりません。それはまさに、議員として既存の膨大な計画書などを再研究することの必要性を痛感する研修となりました。

 

 

総務常任委員会 行政視察研修報告(平成30年)・2

二件目の報告は、佐賀大学農学部内にある「(株)オプティム」での研修です。

今回の研修の目的は、日本の農業が抱える課題である、高齢化・担い手不足・技術伝承の難しさ、を解決するため、AI・IOT・ドローン・センサー等の最先端技術を駆使することによる、スマート農業の取り組み事例を学び、三豊市の農業の未来を探求することと併せ、多様な分野での最先端技術の活用の可能性について研究するためです。

 

(株)オプティムは、佐賀大学農学部出身である菅谷俊二氏が、在学中に「インターネットそのものを空気のように、まったく意識することなく使いこなせる存在に変えていくこと」をミッションに、2000年に起業したものだ。IT活用の可能性は、あらゆる分野に広がっている。農業・水産業・建設・医療・介護・小売・製造・鉄道・電力などがあげられる。

今回訪問した、(株)オプティムの佐賀本店は、佐賀大学農学部と佐賀県生産振興部との三者連携協定によって、[農業×IT]で ‟楽しく、かっこよく、稼げる農業” を佐賀から実現しようと取り組む研究・開発・実践の拠点だ。

ドローンを活用したIT農業の実証例を紹介する。現在、農業政策の事業に麦の『経営所得安定対策等交付金支払』制度がある。白石町(全国の自治体も同様の状況だと考えられる)では、これまで作付け確認を職員が現地へ出向いて行っていた。干拓地を含め大規模な圃場があり、現地確認等に多大な時間を要していた。そのため、交付金支払に遅れが発生することもあり、大きな課題となっていた。

対象範囲の約8,500haを、町全域にドローンを飛ばし空撮して、そのデータをオルソ画像化するとともに、空撮画像と水田台帳データの突合確認し、麦作付状況の確認(9,000筆)を行った。平成30年4月16日~5月20日の期間に作業を完了した(5月20日以降、麦の刈り取りが始まるため、期間厳守であった)。このような結果で、行政事務の負担軽減や、支払時期の早期化の効果が期待できることが分かった。

もう一つは、「スマートえだまめ」プロジェクトがあげられる。ドローンを活用し、圃場の隅から隅までを空撮し、AIを用いて害虫を検知。どのデータに基づき害虫めがけてピンポイントで農薬を散布することで、農薬使用量10分の1「スマートえだまめ」として製品化し、百貨店で高値で販売し完売した。

 

いくつかの農業分野の関する実証事例を学ぶことで、三豊市の抱える多様な分野の課題解決に生かせる可能性を大いに気付かせていただきました。ITを活用した事業展開は、私たちの日常生活の中でITが空気のようにまったく意識することなく使いこなせる存在にするということです。農業分野だけでなく、三豊市が直面する市立病院改築計画等の、医療・介護分野での在宅医療や遠隔診療、見守り等への利活用にも、大きな期待を感じることのできた研修でした。

総務常任委員会 行政視察研修報告(平成30年)・1

三豊市議会総務常任委員会の行政視察研修が、平成30年7月2日(月)から4日(水)の3日間の日程で実施されました。視察研修先は、山口県長門市の地域商社「ながと物産合同会社・センザキッチン」と、佐賀県佐賀市の佐賀大学農学部内にある「(株)オプティム佐賀本店」、山口県周南市における「周南市公共施設再配置について」の3件でした。

 

1件目の、地域商社「ながと物産合同会社・センザキッチン」のある長門市は、平成17年に長門市と3町が合併し、人口35,000人、面積357㎢の、新長門市として誕生している。山口県北西部に位置する日本海に面し、海岸線は浸食地形であることから、天然の良港となっている。古くから漁業の町として栄えてきた。魚介のアラ等を飼料として活用することで、養鶏業も盛んであり、全国的にも珍しい養鶏業専門の専門農協がある。

ながと物産合同会社は、市が掲げる「ながと成長戦略行動計画」の重点目標の一つである『ながとブランド』の大都市圏展開の使命を担い、2014年5月29日に設立された。合同会社設立には、長門大津農業協同組合、深川養鶏農業協同組合、山口県漁業協同組合及び長門市の4者が、200万円づつ出資し、地域商社として活動することとなった。

ながと物産は、農業、水産業といった枠組みを超えて『ながとブランド』を大都市圏に展開するための司令塔に位置付けられるため、よそ者視点が重要な要素であるとの考え、執行責任者(COO)は、全国からの公募とした。多くの応募者の中から山本桂司が選ばれ、2014年10月に着任し、活動を開始し3年半ほどが過ぎたところだ。

ながと物産は、生産者のための出荷調整から発送、販路開拓や商品企画を行う。●代わりに営業活動をし、これまでと違う販路を提供する ●買い手の要望を持ち帰る ●品質や数量・栽培内容に応じて価格が違うので、良いものは高く買い取る ●相場関係なく、シーズン通して一定の価格で継続的に契約する ●コスト計算やパッケージなどもコーディネートする このような営業方針で「代わりに売ってきます、ただし、しっかり作ってくださいね!」で実績を挙げながら生産者の心をつかんでいった。

研修場所である道の駅「センザキッチン」は、市が平成17年から総事業費14億円を投入し建設してきた。施設の営業内容と運営は、大きく3つに分かれる。 ①農林水産物等直売所とテナントは、今回の研修の講師である山本COOが経営する「ながと物産」 ②観光案内所は「長門市観光コンベンション協会」 ③長門市おもちゃ美術館は、NPO法人「人と木」 がそれぞれ指定管理者として運営している。

まがと物産は、市から指定管理料ゼロ。収益源はテナント料や販売手数料であり、「市からの赤字補填を受けない代わりに、収益を出せば社内で分配できる仕組み」で、働く人のやる気を引き出す経営形態している。経営の上で山本COOがやりたくないことが7つある。 ●道の駅同士のみの比較や連携 ●施設運営だけのビジネスモデル ●公共性に準じた万人受けする要素の展開 ●管理人と店子の関係性 ●指定管理料の投入 ●運営者の意思が反映されない施設整備 ●形骸化された情報発信機能  それに対して、こうありたいと願っていることは、「物産館でもない 直売著でもない モノやサービスを提供するだけでない センザキッチンは、お客様のライフスタイルを ほんのすこしでも豊かにしていきたい そんなことささいな思いを 達成する場所」

地域商社「ながと物産」の経営と、道の駅「センザキッチン」の施設運営を通して、山本COOの考える地域に必要な要素とは ◎設けた金で‟地域への再投資”を行う事業 ◎自治体の枠に固執せず経済圏や文化圏など広域で枠を捉える ◎組織外で‟属人的な動き”ができる集まり ◎関わる人たちが将来的に相互に利益供与が可能な仕組み このような考え方で地域商社「ながと物産」と「センザキッチン」を展開している。

 

三豊市には、道の駅「たからだの里」があります。すでに「センザキッチン」にあたる農林水産物等直売所が、実績を上げ定着しています。この施設を起点にし「ながと物産合同会社」にあたる「瀬戸内うどんカンパニー」との連携により、山本COOが展開してきた「ながと物産合同会社」とプロセスを逆にした、‟瀬戸内みとよブランド”の大都市圏に向けた販売戦略構築が、現実味を帯びてきたと実感しています。

やっぱり、よそ者・若者・ばか者の「振り切る勇気」を実行できる 【人】 なのです。三豊市には、山本COOに優るとも劣らない北川CUOがいます。私たちは見守り応援します。わが三豊市の誇る地域商社「瀬戸内うどんカンパニー」が企画運営する「うどんハウス」のオープン(H30年/7月)とともに、ますます大きな可能性を感じた研修でした。