会派啓明会 視察研修報告・Ⅱ-⑨(激論2)

会派啓明会視察研修報告の最終回となりました。前回に引き続いて 激論 の報告をします。

‟国家・日本の存続のために、東京一極集中が必要” だとの立場からの 激論 です。

「東京一極集中の必要性と日本の将来」 明治大学専門職大学院長 公共政策大学院ガバナンス研究科長

一局集中の是非を問うのはナンセンスであり、その必要性というよりも 必然性 であると思っている。

人口減少の続く自治体が、日本創生会議の調査公表で、2040年に約1800あるうちの896が消滅の危機にある。また、そのうち523が人口1万人割れとなる。大都市圏へ人口は移動する現状がある。都市の人口はますます増加し、地方は減少を続ける。

今までの国家運営の仕組みは、税金を地方へ地方から人を供給するという、都市と地方が持ちつ持たれつの依存関係にあったが、バブル経済崩壊によってこれまでの仕組みに機能不全がおきてきた。これに対応するために、選択と集中をせざるを得なくなった。統治システムは地方分権へ、経済メカニズムはグローバル化へ、国土計画はコンパクト国家へである。

これからの社会運営は、東京・名古屋・関東圏が日本のエンジンとなり、〔都市・地域⇔中央政府⇔地方〕 の関係になると考える。大都市への集中と開発軸は、東京・名古屋・関東圏から瀬戸内を通り北九州にかけてだ。

民間の都市戦略研究所の 世界の都市分野別総合ランキング結果 で、東京はロンドン、ニューヨーク、パリについで4位だ。東京・名古屋・関東圏を日本に世界を惹きつける核として、地域資源で稼ぐ地域社会の実現が、日本再興の戦略だと考える。テーマは4つある。

●社会像:世界を引き付ける地域資源ブランドを成長の糧とする誇り高い地域社会

●戦略分野:農林水産物・食品、6次産業、コンテンツ・文化等の日本ブランド選択と集中

●【農業】:農業・食料関連産業生産額100兆円を2020年に120兆円にし、うち6次産業の市場規模1兆円を2020年に10兆円とする

●【観光】:訪日外国人の国内での旅行消費額の1.3兆円を2030年に4.7兆円とする

がある。それぞれの地域にあったメニューがあると思う。どれを選ぶのかは地方自身だ。

東京は、世界で一番ビジネスのしやすい国際都市づくり特区で、日本の成長エンジンとならなければならない。そのキーワードは 〔外国企業が日本企業とビジネスしやすい環境づくり〕 〔24時間活動する国際都市としての環境整備〕 〔外国人が暮らしやすい都市づくり〕 の3点だ。

東京・名古屋・関東圏の集中こそが、日本の生き残りになると信じて疑わない。

 

以上で、会派啓明会 視察研修報告の全12回を終わります。お疲れ様でした。大変な刺激をいただいた講演の数々で、勉強になりました。議員活動に活かしていかなくてはなりません。

会派啓明会 視察研修報告・Ⅱ-⑨(激論・1)

ついに会派啓明会の東京都内での視察研修報告が、終わりに近づいてきました。研修から帰ってからこれまでの一か月余りの間、6月定例会が開会され、間を見て報告を重ねてきました。5月21日の 〔自治体総合フェア 2014〕 における地域包括ケアをテーマとした2件の講演に始まり、22日・23日の日本自治創造学会の8件の講演の報告を終えています。最後にお二人からの 激論 の報告をします。

‟地方が元気でなければ日本の繁栄はない” との立場からの 激論 です。

「東京一極集中と分権~課題と展望~」 古川康佐賀県知事・全国知事会地方分権推進特別委員会委員長

安倍内閣における地方分権改革は、地方分権改革推進本部を設置し、平成25年4月に地方分権改革有識者会議を発足させたことから始まる。いくつかの事務を地方へ移譲したが、さらなる分権改革の進め方として『提案募集方式』を決定し、地方が手を上げれば権限を移譲できるようにした。これからの方向性は、【岩盤規制に、じっくり取り組む】ことと、【自分の地域に必要な権限移譲】の2点をコンセプトとしている。

東京一極集中と地方分権改革は、東京に行かなくても問題解決できるようにしたいため、平成5年に地方分権推進に関する国会決議から始まった。まず、政治・行政上の決定権限を地方に分散し東京一極集中に歯止めをかけた。次に、自立した地方が互いに連携しつつ、地域それぞれの個性や資源を結びつて、世界各地域と交流・交易することで、地方に競争力が増し、活力を持った日本となることを目指した。ところが、平成5年以降も東京一極集中は続いており、特に2000年以降は地方経済や雇用状況の悪化で若年層が地方から東京へ人口移動している。出生率の高い地方から、出生率の低い東京へ若者が移動するため、人口再生産の意味から、日本の人口減少に拍車がかかるのではないか。

ゆとりと豊かさを実感できる地域社会をつくっていかなくてはならない。そのために分権があり、地方分権の考え方の一つに <地方分権型道州制> がある。国の役割を限定し、都道府県を廃止し同州を設置することで地方の役割を拡大させるものだ。

権限移譲・規制緩和と道州制で東京一極集中と地方分権改革が実現できるのだろうか。地方に活力がわき、ワクワク、ドキドキする楽しい地域にならなければならない。そうならなければ若者たちはそこの止まらないし、人口減少は収まらず、日本の衰退は明らかになる。佐賀県武雄市は、市立図書館をカルチャー・コンビニエンス・クラブ(蔦屋書店)に委託した。佐賀に 「代官山」 をつくった。これができるのも権限委譲・規制緩和の成果だ。ちょっとおしゃれな若者たちが図書館&カフェに集まるようになった。東京に行かなくても楽しい空間をつくっていくことは、地方にとって非常に重要なことだ。

 

翌日の5月24日(土)に、蔦屋代官山店を訪問しました。古川さんの言うことがよく理解できました。とても楽しく豊かな空間でした。

 

会派啓明会 視察研修報告・Ⅱ-⑧

日本自治創造学会での研修を終え一か月になります。いまだに全ての報告を終えていません。8件目の講演報告をします。

「教育委員会改革と首長・議員の役割」 村上祐介東京大学大学院准教授

2011年に発生した滋賀県大津市いじめによる自殺事件を発端に、教育委員会の責任の不明確さが大きな問題となり、教育委員会改革の必要性が強く言われてきた。そこで、地方教育行政法改正が検討されてきた。

改正案の概要は、

(1)現行の教育委員長と教育長を一本化した新『教育長』を創設し、首長が議会の同意を得て直接任命・罷免する。新『教育長』の任期は3年に短縮する。

(2)首長と教育委員会で構成される総合教育会議を新設する。総合教育会議は首長が主宰し、大綱の策定、重点とするべきものと緊急の場合の措置を協議・調整する。

(3)首長は、総合教育会議で教育委員会と協議を行い、教育基本法に基づき教育の振興に関する施策の大綱を策定する。

(4)児童生徒等の生命または身体への被害の拡大や発生を防止する緊急の必要がある場合に、文部科学大臣が教育委員会に対して指示ができることを明確化するため、基本法の 是正の支持 を見直す。

そこで、首長・議員の役割と期待したいことが3点ある。

(1)首長と教育長・教育委員会との円滑な連携・協力による教育行政運営  総合教育会議では、首長は自らがビジョンを示し議論を活発に行いつつ、首長・教育長・教育委員の連携・協力を進展させる場とすることで、適切な支援を基礎とした教育行政が行われることが望める。その結果、有権者や子どもにとって実りある地域教育が実現できる可能性がこれまで以上に高まる。

(2)議会による教育行政への適切なチェック機能の強化  教育長・教育委員の人事同意の際に、候補者が議会で所信表明と質疑応答を行うなどして、丁寧な審査を行うこと。また、大綱的方針や職務執行に対するチェック機能が強化できる。

(3)喫緊の教育課題(家庭教育費負担、教師の過重負担など)への対応  家庭の教育費負担や子どもの貧困、教員の長時間労働と過重負担といった問題の改善が、教育の質の向上につながることもあり、政治の役割が重要となる。

平成27年4月1日から始まる。首長・議会の皆さんに期待している。

 

議会の教育に対する関わりがこれまで以上に直接的になることで、役割と責任の重要さに気付くことができました。地方自治体ではなかなか見つけ出せなかった新たな道の模索ができることに、動くかもしれないという期待感を感じることができました。サァー、はじめましょう。

8件目の講演の報告を終わります。

会派啓明会 視察研修報告・Ⅱ-⑦

引き続き、日本自治創造学会2日目である5月23日に行われた、7件目の講演の報告をします。

「地方議員の必須条件・変わる地方議会」 穂坂邦夫日本自治創造学会理事長・地方自治政策研究所理事長

社会環境の激変とともに 「高齢化社会の加速・人口減少・消費力の低下・シャッター通りと買い物難民の増加や、専門家に対する疑問と不満」 が増幅され、住民意識が大きく変化した。このような変化に対して、地方議会は地方政治のエリートの自覚を持ち、住民が求める議会・議員の役割をしっかりと認識し、前例を変え自治体を変えていかなければならない。そのような中にあって、議会が政策提案する時代になっているはずなのに、議会がなぜ政策立案できないのか。

地方議員の必須条件を7点挙げる。

(1)長期戦略力と短期戦略力 「両立させる2つの力」

(2)プレゼンス力と提案力 「個性を活かす」

(3)職員コミュニケーション力 「職員の立場を理解する」(自分の意思を通し達成するためには、力を借りればいい)

(4)会派マネージメント力 「議員の特長と十分な意見交換」

(5)議会交渉力 「損して得取る」

(6)政治環境洞察力 「必ず変わる中央政治」

(7)選挙常勝力 「ビジョンと心と行動力」(基礎力を培い、住民要望は即日実行する)

これからの地域社会は、地方議会の活躍にかかっているのだから、これらを駆使して社会環境の激変と住民意識の変化に応えることのできる、地方議会に変わることを期待する。

 

7件目の報告を終わります。

会派啓明会 視察研修報告・Ⅱ-⑥

日本自治創造学会2日目である5月23日の講演の報告を、引き続き行います。6件目の講演です。

「アベノミクスと日本経済のこれから」 小林慶一郎慶應義塾大学教授

財政再建が経済(景気)成長になるとの考えだ。しかし、アベノミクスはその逆で、経済成長によって財政再建を図ろうとしている。その手法として、金融緩和・機動的な財政再建・成長戦略の三本の矢を掲げている。そこには3つのリスクがある。

①デフレ脱却が実現したら「出口」は?  問題は国債の買い手が続くか否かだ。なぜ日本国債がこれまで買われ続けたのか?それは円高とデフレで海外資産よりも日本国債のほうが魅力的だったからだ(低金利でも安全)。ところが円安とインフレが起きると、日本が低金利のままなら、海外資産を買うほうが得となり、日本国債を売り海外資産を買う。日銀が国債を買い支えればインフレの高騰となる。また、日本が高金利になれば国債は売れるが高金利で政府の負担は雪だるま式に膨張し、景気回復による税収増があっても足りなくなり、高金利が高騰し厳しい不況になる(信用不安で高騰)。

②「成長が先で、財政再建が後」は成り立つか?  公的債務の累積が経済成長を押し下げるならば、成り立たない。先に成長したくても、公的債務の重荷のため成長できない。成長戦略と同時に、財政再建にも着手すべきだ。

③成長戦略の「痛み」に耐えられるか?  市場の制度改革が成長戦略となる。 ●日本の株式リターンを世界平均とする ●資産運用会社の収益を管理手数料から成功報酬とする ●株主(年金基金や運用会社)の役割の改革をする などで、株式市場と年金基金などの規制改革を行う。

それでは、財政再建に必要なコストをいかにして確保するのか。包括的な政策プランとして、 1)2%のインフレ率を実現する 2)高齢者の医療費窓口負担を20%とする 3)年金給付の代替率保証(現役年収の半額)を外す 4)政府の経常経費を1%削減する を行う。消費税は段階的に32%まで引き上げ、その後17%まで引き下げる。さらに、根本的な世代間のコミットメントできる新しい政治システムが不可欠だ。 ●財政再建とは、「世代を超えた投資」 ●地球温暖化対策 ●原発の使用済み核燃料の最終処分建設 などにコストをかけるなどの、将来世代の利益を反映する政治システムの構築が求められる。

しかし、現代社会では利己的かつ合理的個人の社会(かつての宗教や伝統文化などの非合理性によって世代間のコミットメントが実現していた)となっているため、実現が難しい。

それではどうするのか。世代間のコミットメントができない前提で、社会設計すべきであり、新しい政治哲学による財政破綻に備えたプランが必要なのだと考える。

 

6件目の報告を終わります。

会派啓明会 視察研修報告・Ⅱ-⑤

日本自治創造学会 研究大会の初日である5月22日講演の4件の報告は、前回で終わりました。今回からは2日目の23日講演の報告をします。

「ICTの活用による地域経済の活性化」 猿渡知之総務省地域政策課長

地域経済の現状と課題は、公的年金と国からの再配分された交付税や補助金等の財政的資金が大きく支えている現状で、今後、大都市部における高齢化率の急上昇で、地方は経済・財政の自立化の必要性が加速する。よって、地方は税収を生み出す基盤を作らなければならない。そのために、地域密着型企業の増加・生産性向上と地域全体での効率的なまちづくりが欠かせない。そのツールとしてICTがある。

自治体とICTの関係は、【自治体の経営最適化のため自治体クラウドの推進】 【経済活性化・地域経済基盤のため社会クラウドの推進】 がある。自治体情報化の流れは ①1960年代大型コンピュータ ②1970年代ホストコンピュータ ③1990年代クライアントコンピューター ④2000年代Webシステム~自治体クラウド となっている。ICTの活用で地域経済の活性化の時代だ。

(1)自治体クラウド : 所有から利用へ、共同化・集約化

(2)地域経営型包括支援クラウド : 電子自治体の基盤を活用しながら、様々な主体が活用できる支援システムを整備し、住民サービスの向上と官民通じた業務の効率化を図る

(3)公共クラウド : 地方自治体の情報システム基盤とクラウド技術を活用して、システムの統合化・集約化を図り、行政データを公開することを通じて、民間事業者を含む様々な主体が共同で利用できる情報インフラ

(4)自治体の経営最適化 : 共通業務を標準化し共通の情報処理システムの構築と運用でコスト削減  システム管理やメンテナンスをすべて事業者委託できる  きめ細やかなニーズに対応することで各自治体の裁量権が拡大  パソコンだけに限らず携帯端末の活用が見込め現場での対応枠が広がる

(5)社会クラウド : ①データの標準化検索スピードの大幅な性能向上(医療統計情報データの実証実験) ②予防医療・介護基盤(業務の簡素化と必要なデータの一覧性確保) ③金融決済基盤(地方自治体や企業が個別に持つのではなく金融機関のソリューションシステムを活用) ④教育支援コンテンツ創造システム(教育水準確保と生徒側からのオンデマンドの教材作成が可能) ⑤企業支援システム(・地域全体の企業の生産性向上・関連データの検索機能を活用し、潜在的な販売ルートの発見や地域にある原材料供給源の発見) ⑥公共施設のオープン・リノベーションを核とした地域再生事業(公共施設のオープン・リノベーションで地元に住みたくなる空間を━地元に代官山の出現:佐賀県武雄市図書館の場合、20万冊蔵書×雑誌が買える図書館×映画音楽×文具×検索ITソリューション×カフェダイニング×ノウハウ×Tカード×開館時間の掛け算)

ICTは道具だ。地域で生き続けることができる経済基盤強化に活用してほしい。

 

5件目の講演の報告を終わります。

 

 

会派啓明会 視察研修報告・Ⅱ-④

5月22日講演の4件目の報告をします。

「公共財産老朽化への対応━自治体(首長・議会)に求められる課題━」 根本祐二東洋大学経済学部教授

インフラ老朽化問題の実態は、1970年代にピークとなった急激なインフラ整備が、2020年には50年の耐用年数を迎えることだ。放置すれば崩壊し、無理な借金をすれば財政破綻、増税すれば国民負担増となる。現在のインフラをそのまま維持するだけでも年間8.1兆円で50年間必要だ。そのためには、年間8.1兆円確保する政策か、年間8.1兆円使わずに済むような政策のいづれかを決定していかなくてはならない。アメリカは増税を実施した。

老朽化による更新投資需要に対し、大幅な予算不足が発生する。公共施設の【3階層マネージメント】の考え方がある。利用者の範囲によってそれぞれに別々の処方箋を提案し、機能を維持しつつ負担は3割減にする方法だ。

1層は、自治体全体をカバーする庁舎、病院、博物館・美術館、中央図書館、文化ホール、大型体育施設などを『広域化』し、ワンセット主義を捨てて他の自治体と連担する。(中東遠総合医療センター、多摩六都科学館)

2層は、校区ごとにある学校、児童館、幼稚園・保育所、老人福祉施設、公民館、地区図書館などを中核コミュニティ施設として『多機能化』し、複合施設建設する。(千葉県市川市立第七中学校舎・給食室・公会堂・保育所・ケアハウス・デイサービス複合施設整備PFI事業、埼玉県宮代町役場議場多機能化、岩手県の「オガール紫波」公民合築、豊島区役所PFI事業)

3層は、住区の集会所や公営住宅を、民間施設や民間アパートの利用をする『ソフト化』のために、補助に切り替える。(三重県津市猪の倉温泉の民営化施設の公的利用、恵庭市のまちじゅう図書館、蔦屋書店函館店)

地元民間事業者や市民協働による対応の考え方もある。

予防保全包括委託による土木インフラの処方箋。(北海道清里町、東京都府中市けやき並木通り周辺地区道路等包括管理委託)

市民参加による検討会。(埼玉県鶴ヶ島市学校・公民館合築設計ワークショップ、埼玉県宮代町‟あったらいいなこんな場所”ワークショップ)

市民自治による維持点検。(長野県下条村生活道路舗装・道守事業)

国の政策として、インフラ長寿命化基本計画と公共施設等総合管理計画がある。平成25年11月に、インフラ長寿命化基本計画が策定され、平成26年度から行動計画の策定が始まる。予算不足の解消のために、計画に基づく公共施設の処分に75%の財政措置がある。

都市再生特別措置法改正で、立地適正化計画を作成することができるようになり、居住誘導区域と都市機能誘導区域を設定し、事業化ができるようになっている。にわかに、『多極ネットワーク型コンパクトシティ』構想が現実味を帯びてきた。

終わりに、まとめとして首長・議員の皆さんに肝に銘じてほしいことをお伝えする。 ①日に日に確実に問題は深刻化 ②特に、土木インフラの精査が必要 ③今までと同じ発想では問題は解決しない ④この機会に、まちづくりそのものの姿を考えよう ⑤公共施設等総合管理計画は絶好の機会 ⑥利用者に迎合しない 市民の真意を聞く耳を持つ

 

22日受講した4件目の講演の報告を終わります。

会派啓明会 視察研修報告・Ⅱ-③

5月22日講演の3件目の報告をします。

「国家戦略特区による地域経済の再生へ」 藤原豊内閣官房地域活性化統合事務局次長(国家戦略特区、構造改革特区、総合特区担当)

「国家戦略特区」のミッションは「世界で一番ビジネスのしやすい環境をつくる」ことだ。ビジョンは ●大胆な規制改革と税制措置 ●新しい技術やシステムによるイノベーションだ。これは平成25年4月14日に新藤義孝地域活性化担当大臣から発表されたものだ。その後、6月5日の安倍総理のスピーチに「国家戦略特区」の方向性が示された。

《小泉内閣が始めた構造改革特区は、地方自治体から提案を受けて、一つ一つ古い規制に風穴を開けてきた。まさに規制改革の切り込み隊長となった。今回の「国家戦略特区」は、構造改革特区の考え方を、さらに面的なものへと進化させるものだ。》

「国家戦略特区」の目的は、日本再興戦略の3つの政策の『第3の矢』の要として、民間投資の喚起により「日本経済を停滞から再生へ」導くことだ。その戦略は総理主導の下、国を挙げて強力な実行体制を構築し、「国家戦略特区」を突破口として、大胆な規制改革を実行することだ。その手順は、①広く現場から提案募集 ②特区で先行実施 ③成果評価とデータ分析 ④分析を基に新制度へつなぐ という流れだ。これから一連の実行で望まれる成果は、 【世界に打って出る(国際競争力の向上:日本の強み、魅力を活かし潜在力を最大発揮)】 【世界を取り込む(資本・人材の呼び込み:アジアのビジネス拠点の形成、企業・人材・アイデア交流の場に)】 【変われる国日本へ(イノベーションによる生産性向上)】 【多様と自律の国日本へ(地域等の多様性を活かしたルール作り)であり、「国家戦略特区」のミッション「世界で一番ビジネスのしやすい環境をつくる」の実現をすることだ。

平成25年8月12日~9月11日に提案募集が行われ、242団体(地方公共団体:61団体、民間企業等:181団体)から応募があった。特区選定にあたって安倍総理からの指示で、政治的目的が明確となっている。 ●「国家戦略特区」は規制改革の突破口であり、世界から注目されるような画期的な規制改革を緊急に実現しなければならない ●提起された規制改革提案については、実現する方向で対応策を検討してもらいたい というものだ。

「国家戦略特区」で実現の方向で対応策を検討すべき規制改革提案分野は6つある。 1.医療 2.雇用 3.教育 4.都市再生・まちづくり 5.農業 6.歴史的建築物の活用 である。これらを3つの検討方針に集約すると ①『国際的ビジネス拠点の形成(世界から資本・人材を呼び込む国際的ビジネス環境の整備)』 ②『医療費の国際的イノベーション拠点の形成(イノベーションによる高度医療の開発及び実用化の促進)』 ③『革新的な農業等の産業の実践拠点の形成(農業等の改革による産業競争力の強化)』 となる。

今回選定された6つの特区から、日本では既得権益で不可能といわれてきたことを、岩盤を打ち破るドリルの刃で打ち破っていくこととなる。

【東京圏】 (東京都・神奈川県の全部又は一部、千葉県成田市) 国際ビジネス、イノベーション拠点

【関西圏】 (大阪府・兵庫県・京都府の全部又は一部) 医療等イノベーション拠点、チャレンジ人材支援

【新潟県新潟市】 大規模農業の改革拠点

【兵庫県養父市】 中山間地農業の改革拠点

【福岡県福岡市】 創業のための雇用改革拠点

【沖縄県】 国際観光拠点

この6か所の「国家戦略特区」では、具体的な事業計画について、早いものは本年の夏までに、国・自治体・民間が一体となってまとめることとなっている。

世界で一番ビジネスのしやすい環境をつくるために、アイデア募集を最低年2回行うことは決定している。全国から多くの応募が寄せられることを期待している。

 

22日に受講した3件目の講演の報告を終わります。

 

会派啓明会 視察研修報告・Ⅱ-②

会派の視察研修 22日の2件目の講演の報告をします。

「消費税アップと地方財政の行方」 宮脇淳北海道大学大学院教授(前地方分権改革推進委員会事務局)

消費税アップは、地方交付税問題に大いに影響する。消費税増税の目的は、社会保障である年金や介護、医療、子育てに充当することとなっている。2015年10月に10%税率に引き上げる。その配分は、国が6.28%、地方分が3.72%(地方消費税2.2%、地方交付税分1.52%)で、社会保障施策に係る諸経費に使えることとなっている。増税額地方分は10兆円(地方消費税5.9兆円、地方交付税4.1兆円)となるが、地方の実態に合った柔軟な使い方ができるのかはっきりしていない。

消費税増税で行政コストの見直しが必要となる。上下水道や公立病院等の公営企業会計分の支出増加や、公共施設使用料や公共サービスのアウトソーシング等の委託料の見直しなどが考えられる。このことで、消費税引き上げの目的である社会保障改革と社会保障の安定との、せめぎあいの議論が避けられない。

地方財政計画との関係では、財務省と総務省の地方財政計画総額問題や、法人住民税の国税への移管で、自治体間調整が必要となり、自治体間の対立が生まれる可能性がある。

地域元気創造事業が設けられることとなっているが、政策誘導とも取れる成果指標型事業が含まれているため、地方財政の自由度をそぐのではないかと心配する。

終わりに、消費税増税分の社会保障目的税化による地方間配分問題が考えられる。65歳以上人口推移の調査では、今後、関東・中部・関西の高齢者は2030年以降も増加し続けるが、その他の地方は2020年代を境に減少に転じていく。このことから、高齢者人口が増加する都市部と減少する地方では、地方交付税配分において、自治体間格差が拡大する。さらに、地方都市においてもそれぞれに違いがあり、政策立案力による差が明確な時代となる。これからはもっと広範囲な地方全体の底上げが欠かせなくなる。その対策の考え方の一つに 【連担(れんたん:シティー・リージョン)】がある。それぞれの自治体がその地域の中で役割分担し協力体制をつくっていこうというものだ。消費税増税が、財政健全化なのか社会保障に向かうのか、地方交付税が地方財政に大きく関係するため、動きを見定めつつ地域ごとのしっかりとして政策を立案していかなくてはならない。

 

22日に受講した2件目の講演の報告を終わります。

会派啓明会 視察研修報告・Ⅱ-①

三豊市議会会派啓明会の視察研修の2か所目は、5月22日(木)と23日(金)の2日間東京都千代田区の明治大学を会場にして開催された、第6回2014年度日本自治創造学会研究大会です。今回のテーマは 「変わる地域社会、変わる自治体・地方議会~自治、自立、分権~」 で、激動する世界情勢の中にあって国の形と地方自治のあり方について、盛りだくさんの講演を受講することができました。数回にわたって報告します。

先ず、「見える議会、わかる議会~参加型議会への展望~」 と題して、中邨章明治大学名誉教授の講演です。

 

地方政治の課題として、議会が一大転換期を迎えていることだ。議会基本条例等を制定し議会改革を掲げ議会自身が変わろうとしてきた。しかし、議会改革の内容や有権者の関心度等評価はまちまちで、限界が見えてきた。議員報酬と定数の課題の根本的なところからの検討が必要だ。 1.報酬はどこまで下げても住民は高いという 2.定数はどこまで削減しても有権者は多いと判断する 3.所得保証がない中、優秀な人材は確保できるか? 4.活動の広い地方行政を少人数の議員でどう監視するか? 5.地方議員は個人商店、それを議会制度として改革する などの点がある。アメリカの都市に比べると定数は多いといわれるが、アメリカの自治体の仕事は『ごみ』『道路』『税と用途地域』の3分野に限られる。これに比べ日本の自治体は何もかもで仕事量が多い。だから、報酬と定数の連動で予算上限を決め800万円位にする考えもある。また、議会人になることへの壁を下げ勇気を後押しすることだ。たとえば、●40代の参加促進 ●サラリーマン議員の可能性 ●「職業としての政治」の定着 ●所得保証 ●個人商店からの脱却 がある。

関心を呼ぶ議会とするために、これから落とせない施策がある。 ①国土強靭化計画を基にした安全安心のまちづくり ②コンパクト・シティによる高齢化社会への対応 ③第6次産業の創出で地域経済の活性化 などがある。これらの議論の場となる 「見える議会、分かる議会」とならなくてはならない。最後に、そのために求められる議員像を5つ上げる。

1.国・首長に立ち向かう議員

2.‟Look Around”=外部志向のつよい議員

3.ICTを駆使できる議員

4.勉強する議員、族を目指す議員

5.若さを保つ議員、女性・子どもに優しい議員

 

庶民的で地方議会の抱える問題の現実を見極めた内容で、議会改革には、現状に甘んじることなく変わっていこうとする、弛まぬ努力と姿勢が不可欠であることを、再認識することができた講演でした。