私が委員長を務める三豊市議会永康病院調査特別委員会は、平成29年(2017年)8月24日(木)と25日(金)の2日間の日程で、2件の病院視察研修を実施しました。愛知県常滑市の「常滑市民病院」と、岐阜県下呂市の「市立金山病院」の視察研修報告をします。
視察研修先1件目の「常滑市民病院」は、常滑市が開設者である公立病院で、旧病院の建替えにより高台に移転することとなり、市内唯一の病床を持つ病院として、平成27年(2015年)5月に開院した。中部国際空港に近いことから、日本で4番目の開設となる「特定感染症病床」が整備されている。
建物の面積は22,130.79㎡で、ベッド数267床(特定感染病床2床を含む)、地上7階建て、免震構造で、概ね鉄筋コンクリート造となっており、解体・医療機器費用を含め総事業費は約113億円だ。
診療科目は25科目あり、内科、神経内科、呼吸器内科、消化器内科、循環器内科、血液内科、内分泌・代謝内科、外科、血液外科、肛門外科、乳腺外科、脳神経外科、整形外科、小児科、婦人科、皮膚科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉科、放射線科、リハビリテーション科、麻酔科、心療内科、歯科口腔外科となっている。
新病院建設の道のりは次の通りだ。昭和34年開院の旧病院は築56年で、施設の老朽化が著しかった。その影響もあり医師不足と赤字経営となっていた。その状態のまま2度にわたる新病院建設の遅延で、病院職員のモチベーションが低下していた。そのような中、片岡市長は病院再建の熱い思いで、平成22年に「新病院建設」を宣言した。建設と経営改善には市民の支援と応援が必要であり、「あって当たり前」から「あって良かった」へと、市民に向かってうったえた。これを推進し支えたのが、当時参事で現副市長の山田朝夫氏だった。
それにより、平成23年に『みんなで創ろう!新・常滑市民病院100人会議』が設置され、5月~9月にかけ5回開催された。メンバーは、市民91名、医療・行政スタッフ20名で構成され、「地域や市民にとって本当に必要な病院づくり」を目標に、”病院経営” ”医療資源” ”市財政” についてテーマごとにグループワークによる意見交換を行った。また、古い病院の見学ツアー等が行われる中で、メンバーが少しづつ病院の応援側になっていった。100人会議の運営で、重要な役割を果たしたのは、現病院事業副管理者兼事務局長の山本秀明氏のコーディネーターとしての活躍であった。
100人会議を経て『新・常滑市民病院基本構想策定委員会』が、平成23年6月~10月に5回開催された。委員メンバーは15名(学識経験者、医療関係者、市民代表:100人会議代表者等)。ここで改めて確認されたのが、市民全ての医療需要を満たすためには、100人会議の意見を反映することが必要であることだ。
次に着手したのが『新・常滑病院基本設計ワークショップ』で、平成24年8月~10月にかけ6回開催された。メンバーは、市民19名(100人会議参加者)、医療スタッフ9名(病院スタッフ、福祉関係市職員)の28名。ワークショップ内容は、愛知県内の先進病院視察(南生協病院、八千代病院)を実施し意見交換を行った。
このような市民とともに、市民病院のあるべき姿の議論を重ねる過程で、常滑市民病院の基本理念・基本方針が導き出されるとともに、病院を応援する病院ボランティアが結成されることとなった。基本理念は【私たちは、小さいからこそできる「コミュニケーション日本一の病院」を実現します。】で、基本方針は 1.顧客コミュニケーション 2.スタッフ間コミュニケーション 3.地域連携コミュニケーションと決定された。院内のいたるところに理念と方針のメッセージが表示され、その言葉を忘れることなくスタッフたちは日々の業務にあたっている。 また、病院ボランティアは登録者数120名以上で、50~70歳代が活躍していくれている。活動の内容は、●正面玄関での患者さんの送迎 ●車椅子の患者さんの介助、院内案内 ●自動再来機・自動精算機の使い方の案内 ●病院まわりの草取りをはじめ植栽管理 ●入院患者さん向けのレクリエーション(理髪、お話会、笑いヨガ、折り紙教室など) ●コンサート、交流会などのイベント企画 などだ。
まさに、市民のために「あって良かった」病院となっている。
常滑市は、市長の新病院建設の決意表明から2年という期間を、市民と医療現場等の意見を聞く時間として費やしました。その結果、市民の意思を反映した、市民の支援・応援される病院を具現化したのです。三豊市に決定的に欠落しているのは市民参加です。市民病院が市民にとって「あって良かった」といわれるためには、私たちが市民の皆さんの声を聞き、本当にあってほしい市民病院とはどのようなものなのかを、しっかりと見定めなくてはならないのだと思います。議会は、そのためにあるのですから。