永康病院調査特別委員会視察研修報告・1

私が委員長を務める三豊市議会永康病院調査特別委員会は、平成29年(2017年)8月24日(木)と25日(金)の2日間の日程で、2件の病院視察研修を実施しました。愛知県常滑市の「常滑市民病院」と、岐阜県下呂市の「市立金山病院」の視察研修報告をします。

 

視察研修先1件目の「常滑市民病院」は、常滑市が開設者である公立病院で、旧病院の建替えにより高台に移転することとなり、市内唯一の病床を持つ病院として、平成27年(2015年)5月に開院した。中部国際空港に近いことから、日本で4番目の開設となる「特定感染症病床」が整備されている。

建物の面積は22,130.79㎡で、ベッド数267床(特定感染病床2床を含む)、地上7階建て、免震構造で、概ね鉄筋コンクリート造となっており、解体・医療機器費用を含め総事業費は約113億円だ。

診療科目は25科目あり、内科、神経内科、呼吸器内科、消化器内科、循環器内科、血液内科、内分泌・代謝内科、外科、血液外科、肛門外科、乳腺外科、脳神経外科、整形外科、小児科、婦人科、皮膚科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉科、放射線科、リハビリテーション科、麻酔科、心療内科、歯科口腔外科となっている。

新病院建設の道のりは次の通りだ。昭和34年開院の旧病院は築56年で、施設の老朽化が著しかった。その影響もあり医師不足と赤字経営となっていた。その状態のまま2度にわたる新病院建設の遅延で、病院職員のモチベーションが低下していた。そのような中、片岡市長は病院再建の熱い思いで、平成22年に「新病院建設」を宣言した。建設と経営改善には市民の支援と応援が必要であり、「あって当たり前」から「あって良かった」へと、市民に向かってうったえた。これを推進し支えたのが、当時参事で現副市長の山田朝夫氏だった。

それにより、平成23年に『みんなで創ろう!新・常滑市民病院100人会議』が設置され、5月~9月にかけ5回開催された。メンバーは、市民91名、医療・行政スタッフ20名で構成され、「地域や市民にとって本当に必要な病院づくり」を目標に、”病院経営” ”医療資源” ”市財政” についてテーマごとにグループワークによる意見交換を行った。また、古い病院の見学ツアー等が行われる中で、メンバーが少しづつ病院の応援側になっていった。100人会議の運営で、重要な役割を果たしたのは、現病院事業副管理者兼事務局長の山本秀明氏のコーディネーターとしての活躍であった。

100人会議を経て『新・常滑市民病院基本構想策定委員会』が、平成23年6月~10月に5回開催された。委員メンバーは15名(学識経験者、医療関係者、市民代表:100人会議代表者等)。ここで改めて確認されたのが、市民全ての医療需要を満たすためには、100人会議の意見を反映することが必要であることだ。

次に着手したのが『新・常滑病院基本設計ワークショップ』で、平成24年8月~10月にかけ6回開催された。メンバーは、市民19名(100人会議参加者)、医療スタッフ9名(病院スタッフ、福祉関係市職員)の28名。ワークショップ内容は、愛知県内の先進病院視察(南生協病院、八千代病院)を実施し意見交換を行った。

このような市民とともに、市民病院のあるべき姿の議論を重ねる過程で、常滑市民病院の基本理念・基本方針が導き出されるとともに、病院を応援する病院ボランティアが結成されることとなった。基本理念は【私たちは、小さいからこそできる「コミュニケーション日本一の病院」を実現します。】で、基本方針は 1.顧客コミュニケーション 2.スタッフ間コミュニケーション 3.地域連携コミュニケーションと決定された。院内のいたるところに理念と方針のメッセージが表示され、その言葉を忘れることなくスタッフたちは日々の業務にあたっている。 また、病院ボランティアは登録者数120名以上で、50~70歳代が活躍していくれている。活動の内容は、●正面玄関での患者さんの送迎 ●車椅子の患者さんの介助、院内案内 ●自動再来機・自動精算機の使い方の案内 ●病院まわりの草取りをはじめ植栽管理 ●入院患者さん向けのレクリエーション(理髪、お話会、笑いヨガ、折り紙教室など) ●コンサート、交流会などのイベント企画 などだ。

まさに、市民のために「あって良かった」病院となっている。

 

常滑市は、市長の新病院建設の決意表明から2年という期間を、市民と医療現場等の意見を聞く時間として費やしました。その結果、市民の意思を反映した、市民の支援・応援される病院を具現化したのです。三豊市に決定的に欠落しているのは市民参加です。市民病院が市民にとって「あって良かった」といわれるためには、私たちが市民の皆さんの声を聞き、本当にあってほしい市民病院とはどのようなものなのかを、しっかりと見定めなくてはならないのだと思います。議会は、そのためにあるのですから。

会派清風会視察研修(東北編)報告・1

2017年(平成29年)の夏は、記録的な猛暑の日々が続いています。お盆休み明けの8月16日(水)から18日(金)の3日間、三豊市議会会派清風会の視察研修に参加し、山形県酒田市での「空き家対策について」と、岩手県遠野市での「認定NPO法人遠野 山・里・暮らしネットワークの取り組みについて」、青森県おいらせ町での「アグリの里おいらせの取り組みについて」の、3件の研修を行いました。

1件目の、酒田市における「空き家対策について」の報告をします。

 

山形県酒田市は、最上川の河口にあり、古くから日本海沿岸の要港として発達した港町だ。中世期に「酒田三十六人衆」の自治による自由都市として栄え、近世に入り、酒田港を基地とした西廻り航路が再整備されたことから、千石船が訪れることで、「庄内米」と「酒田港」は有名となった。明治以降も県内唯一の重要港湾都市として栄えた。平成17年、酒田市、八幡町、松山町、平田町が新設合併し、現在人口約105,000人、面積602.74㎢の新「酒田市」が誕生した。平成27年10月に『酒田市まち・ひと・しごと創生総合戦略』を策定し、全市を挙げて取り組んでいる。

酒田市では、国の空家対策特別措置法制定より早い、平成24年3月に空家対策に係る条例を制定している。

条例制定を必要とした背景は、管理不十分な空き地・空き家に関する市民からの相談件数が年々増加していた。その都度現地確認や所有者・管理者に対して適正な管理をお願いしていたが、責任を問う法的根拠及び強制力がなかったため、放置された状態が発生していた。個人の財産権と周辺住民の安全、住環境の保全をどう調整するかという問題があった。しかし、将来的に大きな問題となることが予測されたため、制度整備することとした。

条例制定への準備として、空き家等の調査を行うこととして、先ず、地域の実情を最もよく知る自治会長を中心とした自治会での実態調査を、平成23年89月3日~9月5日の間実施した。次に、市職員による現地調査を実施した。調査期間は平成23年11月1日~12月22日の間で、自治会調査で「問題あり」とされたものを対象とした。

条例制定による空き家・空き地の適正管理と利活用の効果を増すために、いくつかの事業を展開している。

●平成24年度より空き家所有者のための啓発パンフレットを全ての固定資産税納税者へ郵送(固定資産税納税通知書へ同封)し、啓発・PRを図っている。

●空き家等ネットワーク協議会を平成25年に設立。不動産業者、建設業協会、司法書士会、市の4者で構成し、無料相談会等を実施している。

●自治会空き家等見守り隊を設立。自治会と空き家所有者との良好な関係を築くため、平成25年度2自治会、平成26年度3自治会でモデル事業を実施している。この取り組み事例を、平成28年度に創設した『ひとづくり・まちづくり総合交付金』に見守り隊登録時の加算金を設定し、市内自治会への普及を図っている。加算金額は1自治会10,000円の定額としているが、今後増額してほしいとの要望が多い。見守り隊の登録状況は、自治会の空き家数が世帯数の5%以上かつ5棟以上を要件として、全自治会459の内128自治会の登録となっている。

●所有者の所在が不明な空き家の対応は、最低限の事務管理を市で実施している。また、相続放棄等で相続人が存在しない危険老朽空き家については、民法第952条第1項の規定により、市が利害関係人となり、家庭裁判所へ相続財産管理人の申立てを実施し、管理人による清算手続きで問題解決を図っている。

空き家対策は、移住政策(人口減少対策)とも連携している。

政策部関係の施策として、 1.空き家改修費補助金(賃貸物件対象):事業費の1/2で上限50万円  2.移住定住者住宅取得費補助金(購入物件対象):購入経費の1/10で上限50万円、改修経費の1/10で上限40万円 の2件がある。

建設部関係の施策として、 3.住宅リフォーム総合支援事業:県事業に市が上乗せ助成し最大60万円  4.住宅改善支援事業:借入金の利子補給 の2件がある。

ほかに、 5.移住希望者への空き家紹介があり、政策推進課とまちづくり推進課が連携し『移住相談員』を置き、所有者が遠方に居住しており内部の荷物が片づけられない等の事情がある空き家を、移住定住者に市が紹介するもの。

 

市の積極的な取り組みがあったとしても空き家等の件数は増加傾向にあります。何もしなければ手の付けられない状況となるのは確実です。人が住んでいたという事実をたちまちに消し去ることはできません。突きつけられた現実に対し、一つ一つ丁寧に施策を打っていくより他になく、飽くなき対策の連続であることを実感した研修でした。

議会広報委員会行政視察研修報告・2

三豊市議会広報委員会の行政視察研修の2件目、広島県廿日市(はつかいち)市議会における「議会広報紙について」の報告をします。

 

廿日市市は、平成15年に旧廿日市市と佐伯町、吉和村が合併した。その後、平成17年に大野町と宮島町が加わり、1市4町で新廿日市市となり現在に至っている。瀬戸内から中国山地の島根県境までの489.48㎢の面積を有し、人口115,000人程で約50,000世帯のまちだ。

廿日市市議会広報紙の【さくら】の名は、市木が「さくら」であることから名づけられた。平成25年から市広報紙「広報はつかいち」と同時配布を始めた。平成26年「広報はつかいち」が全国広報コンクールで特選を受賞したことをきっかけとして、市議会広報紙【さくら】も刷新しなければならないという機運が盛り上がった。そこで、表紙をイラストにするなど、市広報紙との違いを出す試みを行ったが、表面的なことだけではなく、本質的な刷新をしなければならないとのことで、先進地研修でマニフェスト大賞優秀賞(2013年)を受賞した、東京都あきる野市議会を視察し、「手に取ってもらえる議会だより」を目指すこととした。

42号である平成26年8月1日発行号からリニューアルを決定することとなった。読みやすさや表現方法など編集のポイントとして、編集パターンを決めることとした。そして、あきる野市の「ギカイの時間」を参考(パクリ)にするほか、掲載議案を主なものに絞り3件とするとともに、一般質問は1ページに4人とするなどを決定した。

廿日市市議会広報紙【さくら】は、年4回(2月・5月・8月・11月)発行されており、49,000部余を、現在も市広報紙と同時配布している。配布方法は、旧地域ごとにことなっており、廿日市地域9.72円(業者委託)、大野地域10円(シルバー人材センター委託)、佐伯地域17.28円(新聞折込)、吉和・宮島地域0円(地元ボランティア)となっている。

旧廿日市市議会には議会広報紙が無かったが、旧吉和村が合併により加わったことで発行が始められたという経緯がある。当初は(今でも?)「議員個人の活動報告紙を配布しているのだから、議会広報紙は不要だ」との意見もあったようだ。しかし、議会広報紙で伝えきれない部分を個人の活動報告紙で補い、詳しく伝えればよいとの考えが定着してきたようだ。

 

三豊市議会においても、今回の2件の視察研修の成果を活かし(パクリ)、いいところは積極的に取り入れて、「手に取ってもらえる議会だより」に刷新していきたいと考えています。

以上で、平成29年度三豊市議会広報委員会の、行政視察研修報告を終わります。

議会広報委員会行政視察研修報告・1

三豊市議会広報委員会の行政視察研修に、8月8日(火)と9日(水)の2日間行ってきました。研修先は、福岡県大刀洗(たちあらい)町議会と広島県廿日市(はつかいち)市議会で、研修テーマはいずれも『議会広報紙について』です。

 

始めに訪問した大刀洗町は、福岡県の筑後平野にあり面積22.83㎢で、全域が平坦な農業地域だ。平成16年(2004年)に、小郡市との合併を問う住民投票の結果「自立の道」を選択した。これまで、農業を基幹産業としながら農工融合のまちづくりを行ってきた。また、福岡市の通勤圏でもあることで、人口は15,500人程を維持し続けている。

大刀洗町議会広報紙は【たちあらい議会だより】として、平成28年と29年の町村議会全国広報コンクールで入選している。資料としていただいた広報紙の現物は、紙質や印刷の美しさは勿論のこと、余白を有効に生かした、見てみたい読んでみたいと感じさせる意匠をしている。「さすがだ」の言葉に尽きる。

紙面の充実は、議会基本条例の趣旨を踏まえ、広報研修や先進地視察で得た情報やアイデアを活用し(パクリ)進めてきた。

編集における主な留意点は ①文字を詰め込過ぎず、見出し、写真、表、余白のバランスを考慮し、見出しで概要をつかんでもらう。②専門用語を使わず、できる限り分かりやすい表現にする。また、質問と答弁は簡潔に行う。③147号よりフルカラー化し、150号やりパンチ穴を廃止するなど、視覚的な充実を図る。④議会からの一方的なお知らせではなく、住民との双方向型の紙面づくりを目指す。町民の声、傍聴席の声、議会報告会での住民意見と議会からの回答、議会モニター懇談、表紙に子どもを使うなどのコーナーを継続。

今後の検討課題は ●インターネットとの連携強化として、議会だよりで概要を知らせ、詳細はWebで閲覧してもらうよう伝えていく。●議会だよりに対する意見の集約は、傍聴者や報告会参加者へのアンケートや議会モニターとの懇談会で意見交換を行っているが、全住民対象の調査は行っていない。●18歳新有権者との懇談会など、若者を取り上げる企画の取り組み。

 

大刀洗町議会広報紙【たちあらい議会だより】は、”新有権者の「声」”という18歳になった若者のまちに対する思いを紹介する企画で、大刀洗町議会の住民の皆さんとの”かかわり”を大切にする姿勢が、鮮やかに表れています。また、一般質問の紙面では、ともすれば堅苦しい紙面となるところを、漫画の吹き出しのようなデザインで「議員のつぶやき」コーナーとしており、議員の人柄や政治姿勢がそこはかとなく滲み出てくるようで、親しみやすい表現となっています。

これらは、三豊市議会広報紙にすぐにも取り入れたいものだと感じました。大刀洗町議会広報委員会も、これまで行ってきた広報研修や先進地視察で得た情報やアイデアを取り入れ(パクリ)、ここまで来たのです。「おもしろい」と感じたものをどんどん取り入れてきたのです。良くも悪くも新しい動きによって市民からの反響があるのだということなのです。

平成29年度三豊市議会議員研修会報告

平成29年度三豊市議会議員研修会を、8月7日(月)に開催しました。昨年は、合併10周年記念として本市出身で当時NHKニュースウオッチ9のキャスターであった河野憲治氏を招いての、市民も参加する公開研修会として開催されました。本年は、私が委員長を務める永康病院調査特別委員会が中心となり、議員と市関係者を対象とした研修会としました。

市立永康病院の病棟建替えの方向性を調査するための研修会として、城西大学経営学部教授 伊関友伸(ともとし)先生においでいただき、『試練の時代の自治体病院経営』と題して講演をしていただきました。

 

医師・看護師不足は病院経営にとって深厚な問題だ。これまで国は、昭和40~50年代の医科大学の新設ブームの反動で、医師数を抑制する政策を行ってきた。その上に、医療の高度・専門化や人口の急激な高齢化等の影響で、ますます不足することとなった。また、2004年からの新臨床研修制度によって、若い医師の多くが都会の大病院を研修先に選ぶ結果となり、医師の集まるところとそうでないところの、病院の二極化現象が明確となった。

医師・看護師が集まる病院は収益が上がり、再投資がしやすいが、そうでない病院は収益が上がらず、再投資ができないため衰退することとなる。病床規模別100床当たり常勤医師数は、500床以上の大規模病院は大幅に増加しているが、病床数の少ない病院はほぼ横ばい、ないしは減少している。

このような状況にあって、地方病院、中小病院は病床規模は小さく、医業収支比率も悪化している。さらに、これから医師だけでなく看護師不足は一層深刻化し、運営できなくなる病院もでてくる。

さて、自治体病院経営で、一般会計繰入金について考える。総務省は一般会計繰入金を入れた後の経常収支での黒字を重視している。税金投入ゼロを求めているわけではない。

次に、地方における医療・福祉分野の雇用は重要である。地方においてこの分野は、唯一就業者が増加している。高齢化が進む地方において病院や福祉施設は、将来を見込める産業であり、産業振興の観点で病院や福祉施設を考えるべきだ。

さらに、地方の自治体病院は、都市と地方の税の格差を埋める再分配機能を有している。なぜなら、住民の命を守る病院をつくり、医療者を雇用して医療を提供することができるため、他の公共施設より意義は大きい。

地方の自治体病院の支出の約6~7割は人件費で、地方の重要な雇用先である。また、食材や物品購入で地域に落ちるお金も大きい。そして、医師が勤務して病院が機能すれば、都市部が相当額を負担する診療報酬のお金が、地方交付税として交付され、職員の人件費として移転される。繰出し金が巨額となり、自治体財政が破綻するのは問題だが、交付税+αの繰入金で病院を運営できるなら問題はない。なぜなら、地方の医療機関(病院)は生命線であり、なくなれば、その地域の住民は生活できなくなるからだ。

三豊市の市立2病院(永康病院・西香川病院)の経営について考える。この2病院に対して一般会計繰入金が入っている。永康病院に3条繰入金2億6600万円余、4条繰入金1500万円弱、合計2億8000万円余。西香川病院に3条繰入金1億8500万円余、4条繰入金1800万円余、合計2億300万円余。その一定割合は地方交付税の措置がされている。三豊市病院事業会計に約10億円の現金があり、指定管理者(三豊・観音寺市医師会)も相当額の内部留保を有していると推測される。

一方、2病院とも将来的に医師・看護師の医療人材の確保が不透明で、特に、永康病院については数年内に看護師の大量退職が予定されている。これに対して、永康病院では、医師・看護師確保に対する取り組みを行っている。しかし、現在の院長、事務の体制でできるのか。永康病院は存続できるのか?

詫間町地域の民間病院の運営継続ができるか不透明なため、万一の場合、公立病院があれば安心だ。永康病院の存続の方法は、いくつかの方向性が考えられる。●市内の二次救急医療を担う病棟は老朽化しており、早急に建て替えが必要である。●三豊市地域医療あり方検討委員会の答申の通り、2病院の経営統合も選択肢の一つだ。統合することで病院の格が上がり、医科大学からの医師派遣の可能性が高まる。また、国の医療介護総合確保基金の補助、企業債への地方交付税措置が期待できる。新たに統合再整備する病院の設置場所については、市民の利便性を考慮し、コンセンサスの得られる立地を検証し、市民の意見を反映しながら検討を進めることが必要だ。しかし、組織文化の異なる病院の統合は簡単ではない。1+1=2ではなく、1+1=0.8~1となることも多い。

永康病院単独での建替えの場合は、病院のマネージメント力を向上させることが絶対に必要だ。なぜなら、建物は新しくなったが、医師・看護師が勤務せず、病院として存続できなく可能性もある。そのために、院長のほかに病院経営の責任者として病院事業管理者を置き、医師の招聘や病院のマネージメントを担ってもらうことも必要だ。

病院経営を考えれば、病院の建設費はできる限り少ない方がよい。研修や接遇改善など人材に投入するため、ローコストの病院建築が不可欠だ。現在地での50床の病院整備で35億円は高すぎる。別の場所(更地)に100~120床のコンパクトでローコストの病院を建設する方法もある。市当局の建設費見積は甘い。これも病院のマネージメント力が弱いことが一つの原因だといえる。ローコストの病院建築を徹底的に学ぶ必要がある。

 

病院関係者と行政関係者、私たち市議会は、病院経営について真剣に学ばなければならないことを、伊関先生は鋭く、しかも具体的に指摘してくださいました。考えられる要素のすべてをあらゆる角度から切り込んだ、とても示唆に富んだ研修となりました。これを活かさなければ意味のないことも、報告書を作成しながら頭に刻み込んでいるところです。

 

三豊市議会会派「清風会」議員研修報告・2

地方議員研究会の研修、伊関友伸(ともとし)先生の「地方消滅の時代における医療・介護を考える」のテーマの2件目は、『こうすればできる!ローコスト病院建設のコツ』です。

 

病院の新築は、病院の「最大の危機」である。新しく大きな病院を建築すれば、医師は集まってくるという考えがあるが正しいのか?今は、女性医師に対応する視点がいるし、外来をコンパクトにするとともに、職員のアメニティを考えた明確な方向性を形にする設計にするべきだ。これまでに立派すぎる病院を新築したことで、破綻した病院の例は枚挙にいとまがない。宮崎県小林市立病院、静岡県牧之原市と吉田町の一部事務組合病院榛原総合病院、江別市立病院などがある。

病院建築費の現状は、建築費の増加傾向にある。東日本大震災、東京オリンピックの建設需要の影響を受けて病院建設費は増加傾向にある。また、指名競争入札を行うものの不調となる例が相次いでいる。

自治体病院の新築の問題は、起債に頼る病院建築にある。そもそも、自治体病院の新築を行う場合手持ちの現金を多く抱える病院は少ない。起債の原本利息の返済は、一部地方交付税措置や自治体本体の負担がある。しかし、そののちの経営によって、医師や看護師などの医療スタッフの病院職員が借金を返済することとなる。元本利息の編成が病院の収益力を上回れば、病院事業の手持ち現金を使い果たすこととなる。よって、借金による建設は、病院の経営危機に直結する。だから、病院事業で何よりも重要なのは手持ち現金だ。手持ち現金がなければ病院を継続できない。100床で10億円の手持ち現金は必要だ。この手持ち現金をハードではなくソフトの医療に使うべきだ。そこに、ローコスト病院建築の発想の原点がある。

病院新築をする場合のポイントは、手持ち現金をショートさせないことだ。なぜなら、企業債の借り入れを最小限にすることによって、病院の建築コストを抑制することとなるからだ。手持ち現金を減らさないためには企業債の借り入れを最小限にすることだ。病院再編には医療介護総合確保基金、過疎債などを組み合わせることだ。そして、企業債の借り入れを最小限にするためには建物の建築コストを最小限にすることが必要なのは当然だ。

どうすればローコストで一定の質の病院建築ができるか。価値ある病院建築を行うために必要なことは、手持ちの現金と返済可能な起債の額を考え、病院建築に可能な投資金額を考えることだ。可能な投資額で、その病院が望まれる機能は何か、どのような病院構成とするべきなのかを絞り込むのだ。

病院新築をするポイントは他にいくつかある。一つは、病院職員の意識改革だ。病院開設後の財務の危機に際し、どのような行動にするべきか職員が変わらなくてはならない。病院建設中から経営改善を行い、できるだけ現金をためることだ。もう一つは、病院職員や議会・地域住民も病院建築について「人任せ」にせず勉強することだ。

そのような下支えがあった上で、高い建築コストの設計を安い請負金額で建築させるのではなく、安い建築コストの設計を適正な請負金額で建築させることを目指すことだ。その遂行のために「二段階(設計)発注方式」がある。基本設計後に建設会社を公開プロポーザルで決定し、実施設計から参加してもらう。現在、国交省はECI方式と名付けている。ECIとは、「早期に施工者が設計に関与すること」であり、施工者は工事契約とは別に設計業務への技術協力を行うというものだ。

二段階発注方式の効果は、①実施設計時に建設会社のコスト削減提案がしやすい   ②詳細設計が住んでいると、コスト削減のための大幅な設計変更ができないが、それが可能となる ③詳細設計終了後の入札不調は、入札価格の単純な増額しかできなかったが、変更設計により対応が可能となる ④基本設計時の想定金額と建設会社の概算建設費に差がある場合、建設会社にコスト削減の提案が(VE提案)をしてもらい目標額を目指すことができる

建設費の高騰の中建設会社の受注参加を促すためには、基本設計の時点でシンプルでコンパクトな設計にすることだ。そして、施工しやすく、建設会社に利益が見込めるような設計にすることだ。昔のように豪華な設計を安く建設させることはできない。適正利益が無ければならない。

終わりに、始まりと同じこという。病院新築は病院の「最大の危機」だということだ。財政の厳しい自治体では、病院を新築して、病院の経営が悪化した場合、財政支援を行う余裕はない。直ちに病院の存続問題になる。新築はぎりぎりの選択だ。病院を建替えなけらば、若い医師や看護師はよそへ行き病院の将来はない。進も地獄、退くのも地獄だ。ローコスト建築しても、リスクは少なくなるだけで危機そのものは何ら変わりない。最後に言いたいことは、従来の考えにとらわれないことだ。病院建築はどうしても従来の官庁発注の考えにとらわれやすい。徹底的にローコストで質の高い病院建築を考えることが必要なのだ。

 

岐阜県下呂市立金山病院や茨城県筑西市・桜川市統合新病院の成果と取り組みは、病院オタクと自称する伊関先生の情熱と探求心によって具現化されたものだと実感しました。これらの実績を三豊市の市立永康病院建替え計画に最大限生かすべく、特別委員会の総力を挙げて調査研究を重ねていかなくてはなりません。

以上で、研修の報告を終わります。

 

 

 

三豊市議会会派「清風会」議員研修報告・1

連日の35℃を超えるうだるような暑さの日々の中、7月24日(月)地方議員研究会の研修に参加しました。講師は、三豊市議会で計画をしている永康病院調査特別委員会の議会研修で講師をお願いしている、城西大学経営学部教授の伊関友伸(ともとし)先生です。「地域消滅の時代における医療・介護を考える」のテーマで2件の講義を受講しました。

1件目は『地域を消滅させないために何が必要か━持続可能な医療・介護』です。

 

これからの日本に確実に起きるのが、本格的少子高齢社会の到来だ。昭和22年~24年生まれの団塊の世代が高齢化する2025年に向けて、急激に社会変化が進む。都市部と地方でその変化がことなる。都市部では、後期高齢者の急増で【医療・介護資源の絶対的不足】となる。地方では、人口の急減で自治体の消滅が相次ぐことが予測される。

日本の合計特殊出生率は、平成25年で1.43だ。フランスは2.01、アメリカは1.93だ。このままの出生数で推移すると2008年に1億2,808万人いた人口が2110年に4,286万人に減少する。将来的には、日本そのものが消滅する可能性すらある。

なぜ日本の合計特殊出生率が低いのか?

①非正規雇用など若年層の雇用不安がある。若年層で給料が安い、身分が不安定などにより、結婚できない、子どもをつくれない人が増えている。

②女性の晩婚化と出生数の減少がある。女性が晩婚化し、他国に比べて出産年齢が高くなり、出生する子どもの数も減少している。また、出産すると会社を辞めなければならない現実がある。

③若年層の東京圏への移住傾向がある。合計特殊出生率が非常に低い東京圏に移住する傾向が強まっている。そのことが結果として、日本の合計特殊出生率をさらに押し下げることとなる。

次に、医師不足問題を考える。不測の原因はいくつかある。

●少ない医師数  これまで国は、昭和40~50年代の医科大学の新設ブームの反動で、医師数の抑制をする政策を行ってきた。

●医療の高度・専門化  医療は世界レベルで日々進歩していおり、20年前であれば1人の意思が患者の病気を診ていたが、現在では複数の専門科の医師が1人の患者の疾病を見ることになる。

●人口の急激な高齢化  高齢者は、がんや生活習慣病など、長い期間医療を受ける病気にかかることが多い。また、体調を崩す高齢者が救急外来に数多く集まり、救急病床は高齢者でいっぱいという病院も多い。そのため、病院で亡くなる割合が増加しており、病院での見取りの増加は、医療者の負担を増やすことになる。

●インフォームドコンセント  医療現場に、インフォームドコンセント(患者への十分な説明と同意)が入り、医師の仕事が増えることとなる。

●女性医師の増加  男女共同参画の考えから、女性医師の数な年々増えている。出産や子育てで、臨床の現場から離れる人が多く、男性も女性も子育てがしやすい社会をつくる必要がある。

●劣悪な労働環境  少ない医師で多くの仕事をこなさなければならないことから、日本の医師の労働環境は非常に劣悪な状況になっている。特に産科、小児科、救急などの現場では、過労死寸前の状況になっている。

●新臨床研修制度(2004年)と医局制度の崩壊  新人医師が研修を受けたい病院を選び、病院側の希望を調整するマッチングの制度が導入された。これにより、若い医師の多くが都会の大病院を研修先に選ぶ結果となって。

その他、●国民の医療への不理解 ●健康について不勉強な患者の存在 ●患者のコンビニ医療指向 等がある。

医師不足は、次のような現状を招いている。

急性期を指向する医師は、高度・専門化に対応するために、医師の多い病院に集まる。医師の集まる病院に、さらに医師が集まるという構造になっている。その結果、成長する病院と衰退する病院の2極化現象が起きている。

地域を消滅させないためのもう一つの視点として、持続可能な医療・介護を支えるために、医療介護人材をいかに集めるかだ。本格的少子高齢化にあって、若者の減少はさらに進み人手不足が深刻化する。平成に入っての18歳人口は、当初200万人いたのが20年で80万人減少し120万人程になった。ここ10年は横ばいだが平成30年ごろから10年後の40年にかけ、さらに2割ほど減少し100万人を切ると予測されている。

これから一層深刻化するのが看護師不足だ。今後、超少子高齢化のため、都市部を中心に看護師の需要が急増するが、子どもの絶対数が少ないため、看護師の養成数にも限界がある。その中で、看護師不足で運営をできなくなり、無床化診療所となるところも出てくる。また、介護人材も不足する。わが国の2025年度の介護人材の需要見込みは253.0万人だが、供給見込みは215.2万人であり、需給ギャップが37.7万人となり、全ての都道府県で介護人材の不足が発生する。それでは、医療介護人材をいかに集めるか。将来に向けては、何よりも合計出生率を上げることが大切だ。

つまり、地域を消滅させないために合計特殊出生率を高めるよりほかにない。2030年までに合計特殊出生率が2.07に回復すれば、2090年代には人口減少は収束する。2110年の総人口は9,661万人を維持できる。合計特殊出生率を高めるためには

①正規雇用を増やす  地方における医療・福祉分野の雇用を増やし、若者の正規雇用を増やし結婚しやすくする。地方において医療福祉は唯一の就業者が増加している分野で、地域経済への波及効果が大きい。

②女性が子どもを産みやすくする  育児の費用支援、育児休業や保育拡充など、子どもを産みやすい環境の整備が絶対に必要だ。将来への投資としての子育て政策は重要だ。

③若者の流出を抑え、若者を受け入れる  地域おこし協力隊など制度を活用して都市から若者を受け入れることや、都市部から医療福祉の人材を招く取り組みが重要だ。

それでは、地域に医療人材を招くためには、研修機能の充実がなければ人は集まらない。条件の悪い地方の病院こそ医師・看護師などの研修機能を充実させ、人材を集める病院にしなければならない。新しく創設された「総合診療医」があり、地方の小規模病院でも研修教育施設の取得が可能なように制度設計が検討されている。

研修を充実させることで医師数を増やした病院に、京都府福知山市民病院がある。「教育がなければ病院に未来はない」と考え、2008年度に総合内科を立ち上げ、医師研修を積極的に行う。熱心な指導が評判となり、総合内科を志望する医師が多数集まる病院となった。

地域枠の医師・医学生の研修受け入れを積極的に行うことも重要だ。医師・看護師を含めて、医療職の研修体制を充実することが必要だ。あわせて、若い医療者が勤務するための積極的なアピール戦略がいる。「看護師報酬」や診療報酬加算を取得するための「看護師の資格制度」「認定看護師」なども考えられる。特に、感染防止対策の管理者養成は重要性が増している。

次に、介護関係職員の不足にいかに対応するのか。介護現場のイメージが低賃金や過酷さだけを強調する報道に偏っており、まったく異なったものに受け取られているという現実がある。介護の知的労働面や研修・学会などでの発表の機会は重要だ。また、地方自治体の介護職員の研修支援体制も充実する必要がある。杉並区では、「職員のスキルアップへの投資は、高齢者へのサービスの質の向上という形で帰ってくる」と考えている。

終わりに、地方議会議員の役割についてだが、地域自治体病院の存続の危機の時代に地方議会議員の役割は大きい。しかし、その一方で、病院の足を引っ張る議員が多いのも事実だ。医療や病院経営についての確かな知識をもって発言することが重要であり、思い込みや勘違いの発言は、かえって問題を悪化させる。「人任せ」では地域は崩壊する。住民が「当事者」として地域のこれからを考え、行動することが必要だ。自分たちの健康に関することであればこそ、地域医療・介護の再生は民主主義の再生につながると信じている。

 

1件目の、『地域を消滅させないために何が必要か━持続可能な医療・介護』の報告を終わります。

 

 

 

民生常任委員会行政視察研修(松山市)

平成29年3月議会において、平成29年度三豊市一般会計予算の中の山本地区就学前施設建設事業費55,486,000円に対して、附帯決議が出され採決の結果可決されていました。〔付帯決議の内容は、2017年3月17日の『三豊市議会予算委員会(平成29年度)』で形成したいます〕

平成29年7月25日(火)に実施された今回の視察研修は、附帯決議にそうような施設建設の可能性を研究するためのひとつの事例として計画されました。訪問したのは愛媛県松山市余土(よど)保育園で、視察テーマは「余土中学校旧校舎の活用について(保育園移転について)」です。

 

余土保育園は、余土中学校の旧校舎を改築した複合施設の中にあり、本年4月開園した。この施設は、余土保育園の他に、余土児童クラブと松山市子ども総合相談センター余土事務所が設置されている。ここに置かれたいづれの施設にとっても、社会状況の変化から新たな施設整備の必要があり、いかに対応するべきか検討されていた。

●余土保育園の整備前の状況は、余土中学校に隣接する公立保育所で、昭和40年に建設された木造2階建ての園舎だった。耐震化のため改築が必要であったが、敷地が狭く、改築工事実施が困難な状況であった。

●余土児童クラブの整備前の状況は、余土小学校の児童が利用する施設でありながら、小学校から離れた国道を横断しなければならない場所にあった。また、利用児童数の増加で施設が手狭になっていた。

●子ども総合相談センターは、松山市内に既存施設として中心部と北部地域の2か所あったが、子育て世代人口が南西部地域で増加したことにより、相談の利便性を向上するため、3カ所目として設置が求められた。

このような状況の中、余土中学校の跡地利用を地元のまりづくり協議会と市との間で協議を重ね、公民館等の地域施設エリアと保育園・児童クラブ等の子育て施設エリア、売却エリアに分け、活用計画が作成された。それにより、余土中学校旧校舎の内、昭和61年度(平成29年度で31年経過)に新耐震基準で建築されていた鉄筋コンクリート3階建てを、保育園・児童クラブ等の子育て施設として利活用することとなった。旧校舎の改築総事業費は約3.5億円。延床面積2,189㎡、㎡当たり単価約156,000円。3つの施設に要した費用内訳は、保育園1.8億円、児童クラブ0.9億円、センター0.8億円。耐久年数は、RC造建物を60年とすると、耐用年数は残り29年であるが、今回の改築で延伸すると考えている。

【3つの施設の配置図】

基礎や躯体等の構造部を活かすことで軽減できた費用を、非構造部である内装や設備等に余裕をもって投入することができた。その結果、保育と子育て支援・総合相談環境の充実が実現した。

例えば、保育園の遊戯室は3階にあるが、園児が階段を自力でのぼれるための手すりを設置することで、子どもの自ら成長する力を引き出すような工夫をしている。また、旧校舎の広い廊下によって保育環境をゆったりとしたものとなり、安心感とともに保育のしやすさにつながっている。

 

三豊市の政策方針の根幹である「遊休施設の有効利活用」と「財政健全化」に沿った山本地域就学前施設建設計画は、大野小学校旧校舎を活用することによって、実現可能であるという確信につながる研修でした。

 

 

第3回永康病院調査特別委員会

5月15日(月9に開催した第2回の永康病院調査特別委員会から2か月近くになった7月12日(水)に、第3回の委員会が開催され、永康病院から平成28年度の経営実績及び施設整備の考え方と、調査状況の報告がされました。

 

●現在の病棟(157床━許可病床199床)

1病棟(一般病棟):平成28年度より42床を休床しており50床

2病棟(精神科病棟):59床

3病棟(療養病棟):48床

●平成28年実績

外来   一日平均約180名

入院   一日平均約81名(病床率:約52%)

●これまでの取り組み

医科大学への医師派遣要望や、病床数の削減による人員の配置換えと看護基準のアップ、訪問看護ステーションの開設などを行ってきた。

●これからの取り組み

医科大学への医師派遣要望をを継続するとともに研究講座の開設協議や、診療体制の変更を行う。

●施設整備の考え方

施設環境、事業費、整備期間、病院規模、運営影響、交通アクセスを踏まえ、抜本的な整備方針(建設場所等)も併せ検討する。現在、(株)自治体病院共済会に調査委託し、地域の医療需要をはじめ、新病院の健全経営計画・規模・機能などの整備基本調査の策定を進めている。(6月1日~10月31日の期間)

 

委員会の今後の動きは、8月7日(月)に伊関友伸(ともとし)先生の研修会を開催します。また、8月24日(木)と25日(金)の2日間で、常滑市民病院と下呂市立金山病院の視察研修を予定しています。整備基本調査の結果が出されるころまでに、地方の自治体病院の事例や人口減少高齢社会の地方の医療のあり方について、基礎情報の収集に努めたいと考えています。

 

民生常任委員会の行政視察研修報告(平成29年)・3

民生常任委員会の行政視察研修報告の最後は、山口県周南市における「もやいネットセンター推進事業について」です。

 

周南市は、平成15年に徳山市、新南陽市、熊毛町、鹿野町の2市2町合併により誕生した。山口県の東南部に位置し、人口147,000人程、面積656.29㎢で、北は中国山地から南は瀬戸内海を臨んでいる。北部にかけ丘陵地が広がる農山村地帯であり、海岸線に沿って古くから大規模コンビナートがあり、国内有数の大企業の工場地帯として発展してきた。

もやいネットセンター推進事業は、平成25年に『もやいネットセンター』を地域福祉課内に設置したことから始まる。そのミッションは、 ”共に「支え」「つなぎ」「守る」をモットーに、高齢者をはじめ全ての人を「支え」、必要に応じて、関係者や関係機関と「つなぎ」、高齢者等を「守る」、様々な活動を支援” とした。この取り組みを、平成28年から、相談内容を各課につなぐ総合相談の役割と、高齢者の見守りの役割へと発展させ、福祉の《総合相談窓口》としてスタートした。

『もやいネットセンター』の業務体制は、保健師・社会福祉士等の専門職4人を含む7人だ。相談は24時間電話対応することにあわせて、平日の日中はセンターで、平日の夜間及び土・日・祝日の終日は、民間事業者委託している。相談実績は、平成25年の『もやいネットセンター』設置時には1,450件/年程であったのが、平成28年度では2,200件/年を超えており、増加傾向にある。

もやいネットセンター推進事業は、3つの業務によって展開されている。

【もやいネット支援事業者】  平成25年に登録事業者数目標を100件としており、現在67件が登録している。電気・ガス等のライフライン事業者や地域巡回事業者に加え、年を追うごとに人が多く利用し集まりやすい事業者や、交通運輸関係事業者の参加が増えている。

【もやい徘徊SOSネットワーク】  もやいネットセンターへ徘徊情報の提供があった際、ネットワークの参加者に情報提供し、捜索への協力を依頼。 ①「しゅうなんメールサービス」への登録者は、約8,600人 ②「事前登録制度」に行方不明になる可能性のある人の登録は、46人

【もやいネット地区ステーション(地域の見守り支え合い拠点)】  社会福祉協議会にあり、31地区、「地域コーディネーター」37人が配置されており、訪問活動等を展開している。「地域コーディネーター」の役割は、地域の見守り支え合いネットワーク活動の調整役として、”安否確認” ”生活課題を早期発見、関係機関に円滑につなぎ早期対応” ”孤独感の防止” のため活動している。

もやいネットセンターを中心とした周南市の相談支援体制は、●もやいネットセンター(福祉総合相談窓口) ●いきいきサポート地域包括支援センター(地域の身近な総合相談窓口) ●31地区のもやいネット地区ステーション(地域の見守り支え合い拠点 の3層体制の連携強化とともに、民生委員・児童委員や福祉員などの地域の見守り関係者や、警察・消防・医療福祉施設など、地域のつながりが点から面となるような体制構築を目指している。

 

周南市の高齢者の現状は、65歳以上の一人暮らしが6,700人、75歳以上の二人暮らしが2,000世帯であり、より一層のきめ細やかな体制づくりを急いでいるようです。本年度より、周南市が全国に向けて発信するシティプロモ―ション「周南市(しゅうニャンし)」に便乗し、ネコをモチーフにした【もやいネット支援事業者 高齢者の見守り活動 に協力しています】マークを支援事業者の営業車に表示してもらうというユニークな手法で、見守り活動を日常的に推進していく取り組みを始めています。

周南市のもやいネットセンター推進事業は、これまでの5年間計画的に取り組まれてきました。高齢者をはじめ全ての人が安心して暮らせるよう、ネコが路地裏に入っていくごとく、市内の隅々まで目が届き支援の手が差し伸べられるような活動を目指していることを、確認することができたともに、制度をつくることにとどまらず、実効性のある活動に展開するなど、見習うべき点の多い研修でした。

以上で、民生常任委員会行政視察研修報告(平成29年)を終わります。